冒涜的な事件の裏には名状しがたい何かが潜んでいる

服を全て脱がされて全身を焼かれた奇妙な焼死体、ゴミ屋敷の庭に突如出現した死体、家族を他人と勘違いして殺してしまった男……、所轄署の刑事・久遠久の周りでは奇怪な事件が次々と起きる。

そして常人では解決できそうもないこうした事件に決まって顔を出すのが、警視庁の警視であり、信仰問題管理室に所属する降三世明である……あまりにも怪しい部署だ。
そしてこの降三世、事件の解決や犯人捜しには全く興味が無い。彼が興味を示すのはただ一つ、事件の裏にとある“信仰”が関わっているかどうかだけなのだ……。

というわけで所轄の刑事と警視庁のキャリアがコンビを組むという警察ものではお馴染みのバディものの本作品。前門の怪奇事件、後門の変人警視に挟まれて、久遠刑事が右往左往する様子が面白い。

また、本作では毎回事件の裏に特定の信仰が関わっているのだが、実は事件の謎を解くためにはそうした知識を直接必要としていないのが大きな特徴。最初は普通の推理で事件の謎を解く。しかし、その事件の裏には通常のミステリーではありえないこの作品ならではの秘密が隠されているという二段重ねの構成が楽しい。


(「カクヨムで読める冒涜的なクトゥルフ特集」4選/文=柿崎 憲)

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