引き寄せられたその先に

 氷上を滑る。競い合うでもなく表現するでなく、ただ滑る。

 競技としてではなく娯楽の延長線で滑っていた少年が、ある出会いからアイスダンスの世界に入っていきます。

 その中で、人との関わりや競技の奥深さや広がりに戸惑い苦労しつつも進んで行きます。

 青春スポーツ物、という感じがして好いです。

 作中で、色々と氷の上を滑る描写が出てきたりするんですが、主人公の少年が自分の気持ちと感覚を込めて語ってくれるので、読んでいて追体験をしているような気持ちになれます。

 読んでいて、がんばれよ、と応援したくなるお話でした。

 と、ここまでが途中まで読んでのレビューでしたが、ここからが第一部の最後まで読み終わっての引き続きのレビューです。

 ある意味、出会いと興味、行動の始まりと憧れ、といった輝かしい物が前面に出て来ていた前半に比べ、後半では影とも言える部分も語られます。

 気軽に出来ない間口の狭さ。それゆえの競技人口の少なさ。それによるガラパゴス的な指導や行動の狭さに、世界に比しての実力の低さ。

 一言で言えば、日本におけるマイナー競技の影の部分が、登場キャラ達の行動や結果、そして想いも込めて語られます。

 それはある意味、苦しい現実です。けれど、前に進むなら、見ずに済ませる訳にはいかない事実でもありました。

 そこで折れるか諦めるか、それとも――

 そんな気持ちに読んでいてなりますが、それでも最後には、まだまだ前に進んでいくんだ、という力強さが感じられます。

 それらを読み終わり、やはり、がんばれよ、と思うお話でした。

 以上です。レビューでした。

その他のおすすめレビュー

笹村さんの他のおすすめレビュー23