未知の細菌が拡散し滅びつつある世界。そんな中、高校1年生の高垣夢路は納豆好きの水戸湊と出会う。
湊と友人になった夢路は、彼女が計画する納豆菌を利用した世界を救済する方法を手伝うことに……
とあらすじを説明すると何だかギャグっぽいですが、全然そんなことはないのです。
まず、終わりつつある世界を日常として描いているのが凄い。
携帯電話は通じず、食料もどんどん不足していく。それでも学校はあるし、学校を休んだクラスメートにはプリントを届けなければいけない。
こうした日常をごく普通の女子高生の視点から淡々と描くことで、読者もこの特殊な状況を違和感なく受け止めてしまいます。
そして、キャラクターも秀逸で、納豆好きの湊は教室の中でも平然と納豆をかき混ぜて食べるくらいの変わり者。
しかし、彼女が納豆を愛するのにも納豆菌で世界を救おうとするのにも、ちゃんと明確な理由があり、それによって彼女がただの変人ではない魅力的なキャラクターとして立ち上がってくるです。
そしてそんな湊と夢路が、世界の終りを前にして、友情を育んでいく様子が実に素晴らしい。
ちょっぴり変わった設定に目を引かれますが作品の根幹にあるのは、互いを全く知らなかった少女たちが親友になるまでを描く、まさに青春小説の王道!
また、納豆に関するうんちくも豊富なので、納豆好きの方にもおすすめですよ。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
世界の脅威から世界を救うべくたちがった少女の物語!
これだけ書くと、まぁ良くありがちな話だが、侮るなかれっ――この物語は世界を救うのに、なんとっ納豆を使用しているのだ。
これだけ書くと、何だかコメディタッチのおちゃらけた話しに聞こえるが、再び侮るなかれっ――この物語は、めちゃくちゃクソ真面目に、納豆で世界を救おうとする少女の懸命さが描かれているのだ。
まず、納豆で世界を救おうという設定だけでセンス・オブ・ネバンダー(ワンダー)なのだが、本作ではその設定の情報量がハンパない。納豆や菌に対する薀蓄も豊富で、作者の見識の高さがうかがい知れる。
物語のタッチは、なかなか全貌を明かさないホラータッチともいえる描写で、忍び寄る沼の恐怖が淡々と書かれていて非常に読ませる。細部に伏線が張られ、考察が練られ、オチもしっかりしている。手堅く、上手くまとまりすぎている帰来はあるかもしれないが、非常に素晴らしい短編だ。
しかし、読者に置かれては注意していただきたい――
きっと、お腹が減って納豆を食べたくなってしまうから。かくいう僕は、この短編を読んで三度納豆を食べた。冷蔵庫の中を確認してから読書に臨むことをおすすめする。
納豆で世界を救おうとする少女とその夢に魅せられた少女。
二人の少女が来る世界の終末へと立ち向かうハードなSFです。
一見お馬鹿なのですがこれがめちゃくちゃ面白くて、思わず笑いながら一気に読み進めてしまいました。
漫画化となると短期集中連載になっちゃうんでしょうけども、こういうテンションの作品もっと読ませていただきたいものです。
個人的に素晴らしいと思うのは作者様の知識、そしてその使い方です。SFはこれで面白さが決まりますからね!
ワルファリンとか知ってる筈のことなのにこうやって面白く使っているところを見ると思わずクスっと来ちゃいます。
上手い、とにかく上手い良い作品です。