世界の終りを目前に、少女たちの友情が始まる
- ★★★ Excellent!!!
未知の細菌が拡散し滅びつつある世界。そんな中、高校1年生の高垣夢路は納豆好きの水戸湊と出会う。
湊と友人になった夢路は、彼女が計画する納豆菌を利用した世界を救済する方法を手伝うことに……
とあらすじを説明すると何だかギャグっぽいですが、全然そんなことはないのです。
まず、終わりつつある世界を日常として描いているのが凄い。
携帯電話は通じず、食料もどんどん不足していく。それでも学校はあるし、学校を休んだクラスメートにはプリントを届けなければいけない。
こうした日常をごく普通の女子高生の視点から淡々と描くことで、読者もこの特殊な状況を違和感なく受け止めてしまいます。
そして、キャラクターも秀逸で、納豆好きの湊は教室の中でも平然と納豆をかき混ぜて食べるくらいの変わり者。
しかし、彼女が納豆を愛するのにも納豆菌で世界を救おうとするのにも、ちゃんと明確な理由があり、それによって彼女がただの変人ではない魅力的なキャラクターとして立ち上がってくるです。
そしてそんな湊と夢路が、世界の終りを前にして、友情を育んでいく様子が実に素晴らしい。
ちょっぴり変わった設定に目を引かれますが作品の根幹にあるのは、互いを全く知らなかった少女たちが親友になるまでを描く、まさに青春小説の王道!
また、納豆に関するうんちくも豊富なので、納豆好きの方にもおすすめですよ。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)