異世界宿屋の波乱に満ちた「あるある系」日常

 異世界にある小さな宿屋の主な客層は冒険者。しかし、この客たちの中には迷惑な輩も多いという。どんなふうに迷惑なのかと読み始めれば、話数を重ねるたびに増してゆく奇妙な既視感。この冒険者たち、実はリアル世界にいた「クレーマー客」が異世界転生した姿なんじゃないのか……。

 強烈な風刺の効いた異世界お仕事モノです。こういうノリ大好きです。リアルの社会問題を真正面から語られると、なんだか説教くさくなったり憂鬱な雰囲気になったりして煙たく感じてしまうのですが、ワンクッション置いて「異世界」という舞台設定の中でさらりと出されると、素直に、しかも楽しく受け止められて、読み終わったときにはちょっと深いことを考えている……。視点も構成も上手いなあ、と脱帽です。
 異世界宿屋にある「道具」にも巧みな言葉遊びが盛り込まれていて、作家さまのセンスが光っています。

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