海洋世界のダンジョン「アマンデイ」で宿屋の主人を務める主人公。
ダンジョン内の宿屋だけに宿泊客は冒険者ばかりで、いずれも劣らぬくせ者揃い。そんな冒険者相手に時にはクレーム対応に追われ、時には機転を利かせて無茶な注文を見事に切り抜けるというお仕事もののお手本のような作品。
やたらと食事の注文が細かい、夜中に隣の部屋から大きなあえぎ声が聞こえてくるといった現実世界でもありそうな問題から、素性を明かさぬ忍者や子供エルフの応対などファンタジー世界ならではのものまで、その内容は盛りだくさん。
一見、個性的な客ばかりが目立つように思えるが、読んでいると毎回客に振り回されつつもプロ意識をしっかり働かせて、満足して帰ってもらえるよう頑張る主人公に自然と愛着が湧いてくるし、彼の下で働く従業員も良い奴ばかりで読み終えるころにはこの作品世界が好きになること間違いなし。
異世界が舞台ということもあってか、過度なクレーマーが登場してもそこまで嫌な気分にもならないし、一話完結形式でサクサク読めるのもグッド。
(「もしかしてブラック!? お仕事が大変に思える作品」4選/文=柿崎 憲)
異世界にある小さな宿屋の主な客層は冒険者。しかし、この客たちの中には迷惑な輩も多いという。どんなふうに迷惑なのかと読み始めれば、話数を重ねるたびに増してゆく奇妙な既視感。この冒険者たち、実はリアル世界にいた「クレーマー客」が異世界転生した姿なんじゃないのか……。
強烈な風刺の効いた異世界お仕事モノです。こういうノリ大好きです。リアルの社会問題を真正面から語られると、なんだか説教くさくなったり憂鬱な雰囲気になったりして煙たく感じてしまうのですが、ワンクッション置いて「異世界」という舞台設定の中でさらりと出されると、素直に、しかも楽しく受け止められて、読み終わったときにはちょっと深いことを考えている……。視点も構成も上手いなあ、と脱帽です。
異世界宿屋にある「道具」にも巧みな言葉遊びが盛り込まれていて、作家さまのセンスが光っています。
登場人物の職業や世界観などは懐かしい感じのRPGそのものですが、この宿屋で展開される人間模様はどこか現実味があり、やってくる冒険者たちの問題点もファンタジックな味付けはしてあるものの、現代でもありそうなものが多々見られます。
つまりこれはファンタジーでありつつ、現実のお仕事小説でもあるという一粒で二度美味しい作品なのです。
宿屋にやってくる冒険者達は問題児ばかりですが、どこか憎めない人物も多く、この人間臭さがこの作品の味となっています。
奇想天外な冒険とはまた違う、地に足の着いた人間(だけではないですが)ドラマが味わえる、とても魅力的な作品です。
ファンタジーお仕事もの。
ファンタジー世界ではお馴染みの「宿屋」ですが、そんな宿屋にスポットをあてたお仕事作品。宿屋ならではの問題やネタがふんだんに盛り込まれており、メタネタのような面白さにあふれる素晴らしい作品でした。普段ファンタジーを読まない方でも十分楽しめるかと思います。
一つのエピソードが一話で完結する作品集スタイルですが、連作短編のように各話の繋がりが強く、最終的にはそれまでのエピソードを踏まえていい感じに終わるところに好感が持てましたね。こういうハッピーエンド、大好きです!
読みやすいネタや構成で気軽に楽しめる作品です。気になる方は一読してみてはいかがでしょうか。面白かったです。
異世界でも宿屋という職業に着目した点が、まず斬新!
しかしながら、ただ斬新というだけでなく、働く現場での数々のトラブルやお客様それぞれの事情など、異世界でありながらきっちりと心情を掘り下げているところがすばらしいです。
異世界の宿屋で本当にありそうだな、という様々なクレームや事件が発生し、それを個性豊かな従業員たちが各々の経験を活かして解決していく。ときには感心させられ、ときには考えさせられながら、いつのまにか心が温まる気持ちにさせられる。
それでいて舞台が異世界だからこその、現実世界では味わえない一風変わった日常を体験できる作品です。
とあるファンタジーな世界の、とある宿屋。
そこに来るお客は千差万別で。中にはクレイマーも。
相手をする宿屋の従業員は苦労します。ちょいと愚痴めいた事を思ってしまうぐらい。
そんな宿屋を舞台とした日常劇。
という感じのお話です。
何か問題が発生してそれを劇的に解決、というよりは、お客相手に巧く立ち回らないといけない苦労を飲んで、頑張って働く従業員たちの物語、という感じです。
生っぽい感じが個人的にするお話でもありました。
個人的には、どこか風光明媚で自然あふれるんだけど、環境保全やら生き物保全が守られるかの心配もあるリゾート観光地にあるホテル物語、という感じがするお話でもありました。
以上です。レビューでした。