温度差

語り手の男性が刻む言葉のリズムとは違うテンポやトーンで女性の声が入ってくるのが気持ちいいです。
リズムの差がそのまま温度差に現れているし、読み終わったときの心地よさにも繋がっていると思います。
コーヒーを飲みながらぼーっと読みたい素敵な一編でした。

まるで歌詞を読んでいるかのような言葉選びで、すんなり心に入ってきました。
『温度差』というタイトルも良いですね。

過去の経験に、冷たさを知るから感じる温もりの安堵感、朝に居てくれる安心感は、より温かな幸せに包まれますね。

ど、どなたか作曲なさるかたはいらっしゃいませんか！
ここに、大人向けの、オリコンでヒットチャートまっしぐら間違いなしの詩がありますから！

えっ？　　いや演歌ではないです、すみません。

はっ？　　戦隊ヒーロー物の楽曲ではブチ壊しです、すみません。

かように、この物語はとても詩的であり、雰囲気を愉しめる一品です。

作中にあるボサノバ、まさにあのフィーリングがピッタリときます。
もちろんコーヒーはブラックで。
苦味と酸味がほどよい刺激をくれるような、大人の物語です。

誰かにモーニングコーヒーを淹れて差し上げたいなあ。

筆者の成熟した文章が、1人の男の恋を鮮やかに映し出している。

いや～見事なさじ加減のラブストーリーでした。年甲斐もなく、こんな恋愛もしてみたかったなぁと思って今いました（笑）こんな彼女が欲しいです！

凝縮された必要最低限の言葉。
状況を把握させ読者の想像力を刺激させるテンポの良い文章。
詩のような可憐さと暖かみに包まれる珠玉の時間を約束します。

幸せとは、こういう日を過ごせること。

いつもはアイスコーヒーの僕ですが、この小説を読んだらホットコーヒーが飲みたくなりました。「温度差」というタイトルもいいですね。