第9話 邂逅は済んでいた ー 共生者 ー
歴代の栄華を映し出す大堂時の豪邸。その一室に、彼らは集っていた。
「―――では、操縦はミカさんが担当するという事で。行き先は本当にお任せしてよろしいのかしら、ガンタルタン・マグドマート・エブルィーゼさん?」
「すごい…、エブルの名前一発で覚えてるんだ…」
モモカは驚愕する。自分はとても覚えられなかった聞きなれない名前を、このご令嬢殿は一回聞いただけで完璧に記憶していた。
「あぁ、もちろんさぁ。一度、ボクの星に立ち寄ってもらうよ。候補になる星が本当に移住に適しているかの調査も必要だろうし、移住するにしても環境を整えないといけないからすぐにと言うわけにはいかないだろう? そこはガンタルタン星王子のこのボクにバッチリ任せてくれたまえっ」
「頼りにしてますわ。それで……マユミさん、でしたかしら? 本当に大丈夫ですの?
言われてマユミは心配ないとにこやかに返す。
それでも友人たちは彼女を心配して止まないが、彼女―――大堂時美樹だけは彼女の正体を己が胎内より聞かされ知り、本心では
「(ママ、平気ダヨ。
最近、ますます知能があがってきた胎内の異形に、美樹はもう諦めたといった様子で肩を落とす。
「航路上の警戒は、シルバーリグレイさんの宇宙船にお願いするとしまして……」
コンビニの入り口でぶつかった宇宙人。後に彼を問い詰め、協力を取り付けるのは存外簡単に済んだ。
「(プリンの作り方と当面の材料の確保が報酬って、随分とお安いのが気になりますけれど)」
とはいえ時間はあまりない。
DNA強化の設備も宇宙船に備え付けなければならないし、人々を見捨てて己だけ地球を脱出しようとしているお偉いさん達の方の宇宙船も準備しなければならない。
ここ1週間の間に足りなかったピースが次々と埋まっていく。加速する状況に、美樹は逆に恐怖した。
「(事があまりにも都合よく進みすぎてる気がしますわ。万事何事もなければよいのですけれど……)」
でも、本当に彼らに頼ってもいいのだろうか? 何かいいように利用されている気がする。
そもそもがこの星の滅亡の危機を知ったのもこのお腹の子のおかげだし、脱出用の宇宙船の開発にしても彼の要求が発端だった。
未知の不安――――ただでさえ豊かに育って、ますます実り著しい胸を持ち上げながら自身の両肩を抱きしめる。
地球脱出の計画は困難な条件をいくつも乗り越えなければならないが、それを越えた先に脅威は待ち受けていないのだろうか?
……彼女の危機感と不安はどこまでも膨らんで、止まらなかった。
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