第12話 然りとて宇宙は厳しけり ー 人類 ー
地球を脱出してより3日目、船団の航行は非常に順調だった。しかしこの日、一つの懸念と遭遇する。
「大堂時さん、あれってやっぱり……」
「ええ、
半年以上も前に出発したはずの宇宙船。
ズタズタの残骸ではあるが、そのほぼ全体の形がわかる程度に原型を留めている。
「ママ。アレに生命反応はないよ。中にヒトがいたとしても、もうみんな死んでるね」
美樹が昨日産み落とした宇宙人は、生まれたばかりとは思えない流暢な物言いだ。そんな彼が改めて懸念を深める一言を放つ。
「
「そ、それは一体どういう事なんでしょうか??」
ミカは嫌な予感しか感じなかった。
船団は、モモカを妻にと望むエブルの母星へと向かっている。聞く限りではあと2ヶ月は必要だ。
その間に、未知の脅威と一体どれだけ遭遇する事になるのだろう?
「おかえり。どうだった?」
モモカはほぼ事務的な口調で調査に出たエブルを迎えた。だが彼の様子が尋常でない事に気づき、一気にその表情に心配の色を浮かべる。
「ど、どうしたの、そんな顔するなんて珍しい―――」
「モモカ、早く操縦室へいくんだ。そして急いでココを離れるように! 奴らがくる!!」
「??? なんかよくわかんないけど…わ、わかった」
モモカが走りだす。その1分後には、船のエンジン音がけたたましい音を立て、船団は加速しながら目的地に向けて進んでいく。
「はぁ……、くそ。こんなところで連中にでくわすなんてっ」
「どうなさいましたの、エブルさん??」
「ミキか。頼む、いますぐ乗員全員にDNA強化措置を施していってくれないか。奴は一度覚えたDNA特徴を嗅いで獲物を追いかける」
「奴? それはいったい……」
エブルは大きく息を吸い、そして吐いてからゆっくりと口を開いた。
「
宇宙を泳ぐことができる生命体は数多い。その中でも凶悪で知られるものはいくつか存在する。
中でもソウルイーターは種族の繁栄に貪欲で、そのためならばどこまでも醜悪な行動を取る。
「……おそらく、あの船は衛星軌道上のステーションに接続したのですわね。AIからニセの航路を受け取ったに違いありませんわ」
だがそれとは別航路で航行してきたはずのこの船団が、被害にあった船の現場に遭遇する……。
美樹は冷や汗が流れた。
――――そう、彼らはまだ絶滅の危機を逃れたわけではない。
最大出力で宇宙を突っ切る船団の後ろから、無数の影が追いかけてきていた。
目的の星まで約57日もの間、彼女らは日々、宇宙がもたらす脅威の限りを乗り越えていかなければならない。
生き延びて人類が再び繁栄の時を迎えられるのか……まだ誰にもわからない。
黒曜に染まる宇宙 ー Death in the Space ー<終>
黒曜に染まる宇宙 ー Death in the Space ー ろーくん @hinotori0
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます