八咫の皇女は奇病を食む(やたのこうじょはきびょうをはむ)

「大皇国の領なれば、そこ、すなわち奇病あり」
そんな流言が国内を飛び交う、皇紀五五年の春。
第八皇女・玲漸院壱子は、外の世界への好奇心を胸に、ひそかに皇宮を抜け出てある文官の許へ向かっていた。
その文官は、名を平間京作という。彼はかつて皇国一と謳われた学士であったが、現在は一介の役人に過ぎない。彼の職務は、皇国領内で散発する様々な病・奇病の原因究明であった。

壱子と平間、そして近衛衛士の月村茉莉の三名は、奇病の発生地の一つである勝未森へ向かうが、その森は足を踏み入れた者を百日の内にことごとくに死に至らしめる奇病が存在した。
近くに住む、初老の男は言う。
「あの森には魔物がいる。姿は見えないが、いるんだ。入った奴らはみなその魔物に孕まされて死んでしまう。女だけじゃねえ、男も、子供もだ」

死…続きを読む