閉じられた村の安寧に疑問を抱くとき、少年は「外の世界」に気付く

児童文学、あるいは幻想文学として書店に並んでいても不思議ではない、とても格調高い文学小説です。

閉ざされた村で安穏と暮らす少年が、村の外に興味を抱き、脱出しようとする物語……と書いてしまうと平凡なあらすじですが、懇切丁寧に築き上げた世界設定と語り聞かせるような地の文が、圧倒的な没入感をもたらしてくれます。

隔絶された村の秘密。
仕組まれたような村人たちの名前。
同じような毎日を繰り返すだけの「作られた平和」。
村の外には、何があるの?

ふともたらされた毛糸の帽子から謎に気付き、箱庭と呼ばれる世界構造の真相に迫って行く過程は、夢中で読みふけりました。

1章あたり数万文字という区切り方なので、休みの日などに紅茶と茶菓子を用意して、パソコン画面でのんびり優雅に読むことをおすすめします。