些細な嘘で始まったいじめ、けれどそれは必要だった嘘

小学生の「わたし」と「彼」をめぐる、淡い恋愛模様を描いた物語。

文章が味わい豊かで、なまじ心地よく読んでいける分、中盤から起きる「わたし」へのいじめの様子が堪える。

もともと転校生だった「わたし」は、クラスで浮かないように嘘を使って話題提供などをすることが多かったようだが、それは無害な嘘だった。
彼女がいじめられっ子に転落したのは、仲の良い話相手である「彼」に告白したいというクラスの女子の相談に乗ったことによってだ。

そこで彼女はまたもささいな嘘をつくのだが、本来は決していじめにあうような内容ではなかったはずだ。
しかしそれは結果として「彼」への告白を頓挫させることになる。それは不運な事故のようにも見えたのだが、もしかしたらそれすらも「わたし」が計画したことだったのだろうか。

もちろんそうではないのだが、まるで計画的犯行のように展開する恋愛劇の中で、「わたし」が嘘を嘘で否定して自分の気持ちを示す様子にはちょっとしたカタルシスがある。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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