第2話 颯爽登場!ヘルパーズ! part2


―ブライト・シティ 中央広場特設会場―


巨大なサーキメイルが会場に迫り、

出口がふさがり逃げられない観客たちが悲鳴を上げる。


「まずい・・・このままじゃ死人が出る!」


ライトは焦るが、今は何もできない。ただブレイの到着を待ち続ける。




「こんなの、聞いてない・・・」


ふとステージの方を見るとグリッタがまだおろおろとしてステージに立っている。

その時再び揺れとともに轟音が鳴り響く。また近くで爆発が起こったのだ。

爆発の衝撃でステージが崩れだした。少女の方へ資材が倒れようとする。


「危ないッ!!」

「え?わっ・・・」


ライトは駆け出し、グリッタの両肩をつかんで

一気に突き飛ばすように移動させる。

間一髪で少女はステージの残骸に押しつぶされずに済んだ。


「大丈夫だった?」

「は、はい・・・ありがと・・・」


自分の目の前でやさしく微笑むライトの顔を見て少女の顔に朱が差す。


ライトはグリッタを立たせると柱の近くへ誘導する。


「ここなら崩れにくい。できるだけじっとしてるんだよ。

慌ててうろつくのが一番危ないからね。」


それだけ言うとライトは人気のないところを探して再び通信機を取り出す。

自分を呼び止めようとするグリッタの声は周囲の声に紛れて聞こえなかった。


「ブレイ、まだか?」

『あと5秒でお前の真上だ!』


通信機から返ってきたその言葉通り上空に青い飛行機が出現する。


「見ろ!ブレイライトの片割れだ!」

「助けに来てくれたのか!」


市民たちの声に希望が混じる。


ブレイはサーキメイルの眼前まで飛んで行き変形した。


『モードチェンジッ!』


人型となったブレイは着地して目の前の敵を指さす。


『人々の楽しみと平和な日々を砕くその行為!

この正義の心にかけて、許しはしない!今すぐ止まるんだ!』


サーキメイルは無言のまま、ブレイの声には応えない。

代わりに腕に装備された爆発系の魔導武器をブレイに向けた。

数秒の魔力の奔流の後、オレンジ色の光の球が発射される。


『くっ・・・』


それを間一髪でかわすブレイ。

だが・・・


「うわあああああああああ!」


その先には人々の閉じ込められた会場があった。

幸い市民に当たりはしなかったが、次に敵の攻撃をかわせば、今度こそ当たるかもしれない。


『ヘタに避けられんっ・・・かといって合体もせずに受ければ長くは保たん・・・!

どうすれば・・・!』


サーキメイルはそれを分かっているように容赦なく爆発魔法を発射し続ける。


『くっ・・・ブレイブ・バルカン!』


肩の部分に装備された機銃で爆発魔法を撃ちぬく。

機銃の弾丸に接触した爆発魔法は起動しその場で爆音と衝撃をまき散らす。

魔法を撃ったサーキメイルの方はビクともしていないが

ブレイは煽られて吹き飛びそうになる。


『ぐぅッ・・・・』


肩のブースターから逆噴射をかけ、姿勢を維持する。

自分が後ろに吹き飛べば会場に突っ込んで大惨事になる。


爆風のあおりが収まった。

ブレイはそのまま肩のブースターを噴射し続けサーキメイルに飛びかかる。


『とぁーッ!!』


空中でサーキメイルの顔面に至近距離からミサイルを乱射した。


『これでどうだ!?』


着地しサーキメイルの様子をうかがうブレイ。

ミサイルの煙が晴れる。

サーキメイルは全くの無傷であった。


『ダメか・・・っ!?』


次の瞬間、オレンジ色の光球、爆発魔法が飛んできてブレイに直撃する。


『ぐああああああああああああ!』


吹き飛ぶブレイ。空中で姿勢制御し会場に突っ込むことは避けたがダメージが大きかった。


「ブレイ!・・・いったいどうすれば・・・くそっ!俺は何もできないのかッ!」


ライトはこぶしを血が滲みそうなほど握りしめる。


その時、通信機が着信を告げた。めったにないことで戸惑うライト。

しかし通信の送り主に思い当たりすぐにつなげる。


「父さん!?」

「そうだ。ライト。ヘルパーズが完成した。状況は聞いている。すぐに彼らを送り込む。」「ヘルパーズが!?ナイスタイミングだよ、父さん!」


ヘルパーズ。その名を聞いたライトの目に希望の光が宿る。

以前から聞かされていたブレイライトのサポートメカ、ヘルパーズ。

ブレイと同じく人工知能を搭載した3機のロボットたち。

今のこのピンチを打開できる手段が舞い降りたのだ。


『ナイスだってよ。嬉しいねぇ。』

『浮かれとる場合か。すぐに市民を助けに行くぞ!』

『ええ。死人が出ては事です。急ぎましょう。』


通信機からライトが聞いたことのない声が3つ。

彼らがヘルパーズと言うことか。


「よーし、ヘルパーズ!緊急出動!」

『『『了解!』』』


ライトの掛け声に3つの声が力強く返した。



そのころブレイは敵の爆発魔法弾をさばくのに精いっぱいで

攻撃に転じることができずにいた。


『このままでは・・・』


ブレイが恐れていた瞬間はすぐにやってきた。

放たれた一発の爆発魔法をさばききる前にもう1発発射されたのだ。

光球はブレイの真横をすり抜け、

市民たちの閉じ込められた会場の元へ飛んで行く


『しまった!』

「おい、また飛んできたぞ!」

「まっすぐこっちに来る!」


魔法弾が飛んできたことに気付いた市民は慌てふためきパニックを起こす。

今度はこのままいけば市民に直撃する。


その時―

バギーのようなオレンジ色の大型車両が会場に向かって爆走してきた。

巨大バギーは素早く会場の前に急行すると、飛び上がって変形し始めた。


『モードチェンジ!』


車体の下から折りたたまれていた腕や足が出てきて

バギーは人型のロボットに変形した。


『市民は傷つけさせません!バリア展開!』


ロボットが素早く魔法弾の前に躍り出て両手のひらを向けると本人が言うように

両手の周りにバリアが張られ、魔法弾を打ち消した。


「今度はなんだ!?」

「ブレイライトの仲間か!」


増援の登場に市民たちの声にも希望が戻ってくる。



『ふんっ!』


雄々しい掛け声とともに会場の出口をふさいでいた瓦礫が撤去され、

同時に大きな穴が開き大型の出入り口となった。


そこにはドリルを装備した黄色のロボットが立っている。


『さあ、道は開けたぞ。慌てずに急いでここから避難するんだ!』


市民たちが一斉にその穴から走り抜ける。

その様子を見て少し渋い顔をする黄色いロボット。


『慌てるなと言っとるだろうが・・・』


とは言え非常時。のんきに歩いて避難されるよりは良いのかもしれないが。

そこで黄色いロボットに通信が入る。


『急げとも言ったじゃんよ?ダイバー。』

『慌てるのと急ぐのは違う!と言うかお前は何をしとるんだヘルプフライヤー!』


ダイバーと呼ばれた黄色いロボットは通信に声を荒げて応じる。

フライヤーと呼ばれた通信先の声はふふんと笑って答えた。


『大事なお届け物さ。もうすぐそっちに着くぜィ。』

『届け物だと・・・?』


怪訝な顔をするヘルプダイバーの前にオレンジ色のロボットが移動してきた。


『市民のみなさんの避難は済んだようですね。』

『ヘルプクライマー。さっきのバリアは見事だったぞ。』

『使命を果たしたまでです。』


ヘルプダイバーの称賛にそう答えるオレンジ色のロボット、ヘルプクライマーは

しかし誇らしげな顔で微笑む。


『そうか。・・・さて、今度はブレイを助けに行くぞ。』

『その必要はないよん。俺、到着。』

『ヘルプフライヤー!それは・・・』


街の入り口のあたり、視認できる距離に現れた

ヘルプフライヤーと呼ばれたロボットは飛行機型に変形しており、

その下部には本人よりも巨大なトレーラーがつりさげられていた。


『ランドブレイブか!』

『そうそう。ちなみに爆発物の反応がまだあちこちにある。

 あのサイコ野郎好き勝手爆破する気だ。

 お前らはそっちの処理をよろしく頼むよん。』


ヘルプフライヤーがそういうと他の2機のもとに

位置情報のデータが送られてくる。


『了解しました。行きましょう。ヘルプダイバー。』

おう。敵は彼らに任せるとするか。』


ヘルプダイバーとヘルプクライマーは送られてきたデータの位置に向かった



『モードチェンジィ!』


ヘルプフライヤーは人型のグレーのロボットに変形し、

最後に会場から出てきたライトとルーメのすぐそばに着地した。


「お前がヘルプフライヤーか。」

『イエス・・・ライト。スカイブレイブもすぐに飛んでくるぜい。

ランドブレイブはあっちに置いてきた。いつでも合体できる。』


その言葉の通りスカイブレイブが広場の上空に現れた。自動操縦だろう。

しかし着陸を待っていては時間がかかる。

そして近くには市民はもういない。

爆発の危険があるため遠くに避難しているようだ。

それを確認したヘルプフライヤーはライトに向き直る。


『さーて、じゃあいっちょ飛んで見っか、ライト!』

「へ?」


ヘルプフライヤーはライトをつかむと右手に装着されたカタパルトに乗せる。


「いや、ちょっと!?」


うろたえるライトに構わずヘルプフライヤーはカタパルトを起動する。


『レッツゴー!シュート・ライトォ!』

「普通に運んでくれよぉ!」

『あ、その発想は無かったよ。ソーリー』


と、謝罪するが時すでに遅し。次の瞬間、

ライトの体は上空のスカイブレイブを目指して宙を舞う。

想像した時は笑っていたルーメだったが

実際に吹っ飛ぶライトを見て顔を青くする。


「うわあああああああああああ!」

「ライトさああああん!」


先ほどまでとはまた違う、今までにないピンチであった。

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