第2話 颯爽登場!ヘルパーズ!
第2話 颯爽登場!ヘルパーズ! part1
ある一人の地球人がたどり着いた「惑星F」。
彼の作った、誰でも魔法を使えるようになる
「回路」によって発展した一大都市、ブライト・シティの繁栄には、
皮肉にも「回路」を使った悪の登場により影が差すこととなった。
魔力で動く巨大な鎧、「サーキメイル」。
それを生産し、犯罪者にばらまく犯罪結社「魔王軍」や、
一部の錬金術師たち。
衛兵団では歯が立たない強大な力を持つサーキメイルの前に、
人々の希望は潰えたかのように見えた。
しかしそこに颯爽と一人の英雄が現れる。
その名は「幻界英雄ブレイライト」。
彼は地球の科学の力により、悪事を働くサーキメイルを次々と撃破していく。
暗雲立ち込めるブライト・シティに、一筋の光が差し込んだ―――
―犯罪結社魔王軍アジト 魔王の部屋―
犯罪結社魔王軍。わずか十数年で惑星Fを大きく発展させた「回路」を使い、
魔力で動く巨大人型兵器「サーキメイル」を生産し悪事を働く悪の組織。
町の衛兵はもちろん、王国の騎士団ですら
魔力装甲で守られたサーキメイル1体にずいぶんと手を焼く。
そんなものを量産できる彼らは間違いなく世界レベルの脅威であった。
そんな魔王軍の、所在を秘匿されたアジト。
その中の薄暗い一室、豪華な机の上に設置されたモニターの前に
黒いスーツに身を包んだ一人の男が座っていた。
彼の名は魔王。本名は誰も知らない。
それを知った者は消されると組織内で噂されており、誰も知ろうとはしなかった。
そんな彼が見つめるモニターに表示されているのは、
魔王軍が売りさばいたサーキメイルを撃破するブレイライトだった。
「誰かは知らんが、まさかこんなものまで持ち込んでいるとは・・・」
この星の力、魔力を使わずに稼働する全長40mの鋼鉄の巨人、ブレイライト。
この星ではありえない技術の産物。
この星の住人からすればサーキメイル以上の未知の存在。
しかし魔王はこの鋼鉄の巨人を知っていた。
魔王はフッと笑い
「まあ、私も人のことは言えんか・・・なあ、ダークよ。」
そう言ってモニターを操作すると画面が格納庫に切り替わる。
そこには、真っ暗な格納庫の闇に溶け込むようにして、
黒いロボットが佇んでいた。
黒くない頭部は他の部位よりもはっきりと見える。
その形状は、ブレイと全く同じであった。
魔王は、ブレイライトを知っていた。
自分も同じものを持っていたから。
「しかし・・・計画には邪魔だな。」
魔王は他に誰もいない部屋で一人つぶやいた。
―ブライト・シティ 中央広場特設会場―
ブライト・シティの中央広場付近にできた広い空き土地に建てられた
コンサートホール。その観客席には千を超える人々が既に腰かけていた。
「みんなー!今日は来てくれてありがとー!楽しんでいってねー!」
そう言いながら一人の少女が緑の瞳を輝かせ、
腰まである金髪を揺らしながらステージに躍り出た。
黒を基調としたステージに、白い衣装がよく目立つ。
会場からどっと歓声が沸き起こった。
「こういうイベントは初めて来るけど、すごい熱気だね。」
「ええ、今をときめく歌姫、グリッタちゃんですからね。」
そんな会話をしながらステージの裏でライト・ジンとルーメ・ヘルフェンが
ステージに立つ少女、グリッタを見守っていた。
正確に言うと、ライトはグリッタが立つステージの方を見守っていた。
少女の登場とともにライトアップされるステージを眺め満足そうに頷く。
「うん、仕掛けはちゃんと動いてるな。」
「もう、テストなら納品前にしたじゃないですか。」
「そうだけど、やっぱり気になるよ。なにせ、俺が初めて携わった仕事だからね。」
ライトがそう言うように、このステージの音響、照明、特殊効果などの仕掛けは
彼が設計したものだった。
顧客――つまりグリッタの所属する事務所からの要望に応じて
既存技術をつなぎ合わせたものに過ぎないのだが、
それが初めての仕事となるライトにとっては一世一大の大仕事だった。
「それじゃあ歌います!グリッター・プラネット!」
「お、始まったか。仕掛けのチェックは終わったし、ステージも楽しんでいこうかな。」
「ええ。旦那様の計らいか、今日はもう予定もありませんし、ゆっくりなさってください。」
ステージの少女が歌いだす。
会場は少女の登場時とはまた違った熱気に包まれる。
歌
グリ
―ブライト・シティ 倉庫―
「本当にあるとはな・・・へへ・・・」
ブライト・シティの町中、とある倉庫の入り口で一人の男が呟く。
男の目は焦点が合わず血走り、誰が見てもまともではなかった。
「こいつがあれば・・・何もかもぶっ壊せる・・・!ははははは!」
嬉しそうに笑う男の視線の先には、
這いつくばるような姿勢で倉庫に収められた巨大なサーキメイルがあった。
彼は魔王軍からここに呼び出されたのだった。
魔王軍はこうして目を付けた人間にサーキメイルを与え、
各々の思うように悪事を働かせる。
また一つ、ブライト・シティに、光を覆う影が近づいていた。
―ライブ会場―
「最後まで聞いてくれてありがとー!楽しんでくれたかなー?」
少女の問いに会場全体が拍手と歓声で答える。
ライトとルーメも惜しみない拍手を送る。
「素敵な歌声だったね。」
「ええ、私も直接聞いたのは初めてですが、来てよかったです。」
こういったものに疎いライトだが、彼女の歌声は素直に好きになれた。
会場は熱気を維持したまま、
ファンたちがアンコールと叫び始めた。
「へえ、こういうのもあるんだ。」
「最初からアンコール前提で曲を用意しておくところも多いんですよ。」
アンコールを受け、グリッタが笑顔で答える。
「それじゃあアンコールにお応えして・・・歌います!シュート・ライト!」
「へっ?」
光を放つと言うような意味なのだろうが、「ライトを射出する」
と言うように解釈でき、ライトは微妙な表情になり、
ルーメは直立不動の姿勢でミサイルのごとく空を舞うライトを想像して噴き出した。
「ら、ライトさんを射出・・・ぷくっ・・・」
「ははは・・・」
そんな二人の様子など知らず、少女は歌いだす。
だが次の瞬間響き渡ったのは、歌声ではなく爆発音だった。
会場が大きく揺れ、外壁の上の方の一部が崩れ、外の景色が顔を出した。
「何ッ!?」
会場の外、すぐ近くで爆発が起こったようだ。
そしてすぐその方向から一体のサーキメイルが姿を現す。
寸胴な体形で、いかにも高出力そうな機体だ。
「魔王軍の新型か!?こんな町中にいきなり現れるなんて・・・!」
一瞬で会場の歓声は悲鳴に変わり、警備員の誘導で観客の避難が始まる。
だが事前に用意してあったかのように周囲で爆発が連続で起き、
会場のあちこちが崩れ出入り口がふさがってしまった。
「マズい!これじゃみんな避難できない!」
「こんな往来ではスカイブレイブを呼び出して乗り込むことも・・・」
「くそっ!」
全長が16mもあるスカイブレイブをこんなところに着陸させる
ことなどできないし、何より人目が多すぎた。
市民が危険な目に遭っているというのに動けない自分に
ライトは歯噛みするが、
悪人たちと戦うにはまだブレイライトに乗る自分の正体、
つまりマシンの格納庫の居場所を知られるわけにはいかなかった。
もし正体が世間にバレれば、
魔王軍をはじめとする犯罪者たちから標的にされ、
常日頃から襲撃を受けることになってしまう。
そうなれば圧倒的な数の前に補給も修理も間に合わず
いかなブレイライトといえど勝ち目はない。
集団相手に戦うには正体不明、神出鬼没であることが絶対条件であった。
ライトは周囲を気にしつつこっそりと通信機に話しかける。
「ブレイ。緊急出動だ。俺は今動けない。頼むぞ!」
『了解!』
ライトは周囲の人々と同じく、ここから脱出することはできない。
つまりは出撃不能。あのサーキメイルとはブレイのみで戦うことになる。
初めて経験するタイプのピンチであった。
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