底辺から見た底辺の世界は社会そのものだった

この小説の主人公は、建設現場に派遣されている日雇い労働者です。彼らがいないと建設もままならないし、働いて散財して経済を回しているので必要な存在ですが、一般的には人々から「底辺」とみなされ、時には見下される存在だと思います。そんな底辺の主人公から見た世界が時折ユーモアを交えながら淡々と語られていきます。貧困の悪循環に嵌って抜け出せず、社会から搾取される存在であることを自覚しながらも、同じくらい惨めな同僚たちを鼻で笑いながら日々を過ごしています。僕はこれを読みながら、ここで語られている内容が決して他人事には思えませんでした。資本主義社会の残酷な部分を炙り出すような描写、さらに読者に自分を顧みさせるような構造を作り出す終わり方もとても秀逸だと思いました。

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