色彩と服飾。ここは一線を画す。

 大正浪漫和風ファンタジーのカテゴリとして、実に王道、かつ、きめ細やかな描写を楽しめる作品だ。

 特に、色彩と服飾。ここは一線を画す。

 そこに、キャラクターの情動の対比と、ストーリーラインの起伏を乗せることに成功している点は、特筆に値するだろう。
 主人公の成長と恋心は、そこに色を添え、また、その花を手折るように人間関係の交錯と捻れが展開する。

 詳しくはないが、いわゆる乙女ゲーと称されるような世界観を味わったのではないだろうか。そのテの恋愛シミュレーションゲームが好きな方にも、実にオススメである。
 勿論、性別問わず読者にオススメはしておこう。

 作品のタイトル回収も、なるほど、そうきたかと納得のカタルシス。
 そこから完結までは、苦も無く一気読みだ。

 さて。
 自分が読み手としては面倒くさい人種だとは、理解している。
 何か読もうと思っても、なかなか手を付けられない作品があるし、1文字でも目にしてしまえば、勢いで最後までいけてしまうときもある。

 この作品には、読み続けた時期もあれば、間を置いてしまった時期もあるが、不思議とまた途中から入り込みやすい敷居があった。
 文字数やジャンルといった垣根を越えた取っつきやすさというものは、作者様の筆力の安心感、という他ない。

 正直に申せば。
 前半と後半において、ハッキリとクオリティの差が感じられる。当然、後半はポジティブな印象だ。
 長期に渡る連載と弊害とも、その間に置ける作者様の萌芽から開花への成長の証とも取れる。

 他の長編作品を読ませてもらい、またレビューを書かせてもらった経験も踏まえて言えば。
 それでも、ストーリーとして、この作品が一番好きだ、と書かずにはいられない。


 

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