淀みなく広がる絹織物のように美しいファンタジー

重厚で美しい異世界ファンタジーの醍醐味を味わうことのできる物語です。

竜の子が背に乗せて天空へ連れてきたのは息を呑むほどに美しい人間のエルダ姫でした。
けれども彼女は呪いによって声を出すことを許されていません。そんな彼女が唯一声を発せられるのは歌うときだけ。ただし、その歌声には世界を脅かせるほどの恐ろしい魔力が備わっていたのです。

過去の出来事から人間に不信感を抱く天空の人々は、美しいエルダの容姿とは裏腹なその力を恐れて警戒しますが、天空の王と王太子ボリスは彼女を天空城に匿うことを決めます。

彼女はその力を利用しようとする魔王と魔の力に取り込まれたある人物から逃れようとしていました。
しかしその追手はエルダの所在を突き止めて連れ戻そうと手を伸ばしてきます。
その害は天空にも及ぶことになりますが、ボリス王子は国とエルダを救うことができるのか──。

淀みなく流れる美しい文章は決して難解なものではなく、心地よくファンタジーの世界に引き込んでくれます。
登場人物達の心情や思惑もよく理解できますし、天空で起こる前代未聞の出来事に戸惑いつつも王や王子を支えていく様子にリアリティを感じます。

前篇は非常にいいところで終わってしまったので、これから後篇を読みに行かなくては!

その他のおすすめレビュー

侘助ヒマリさんの他のおすすめレビュー479