己の人生は国の未来への供物──戦に血濡れた王子の、最後の十日間

次期王位を巡って国を荒らした内乱に終結の時が近付いている。
王族は強大な魔力と金色の眸を持つものだが、桂雅の眸は青い。
また彼は、王族の血の為せる術を王の御前で披露しなかったが、
それも過去のこと。桂雅は今や玉座に手を伸ばさんとしている。

思誠は、気性の激しく力の強い桂雅が心を許す数少ない友人。
思誠のまた別の友人、羅英には最近、不審な言動が見られる。
どうやら何者かと通じているようだと思誠は感じているものの、
微妙なバランスを保ったまま友人同士の付き合いは続いている。

緊迫した情勢の中、王族が躍起になって探す『鍵』を持つ娘が
桂雅の領内に飛び込んできた。桂雅は娘を捕らえ、囲い込む。
そこへ畳み掛けるように、自ら王族を嫌悪する王子とその軍勢、
残忍で強力な王位継承権者とその軍勢が桂雅へ攻勢を掛ける。

内乱最後の10日間で繰り広げられる人間ドラマ。
登場人物のそれぞれが事情と信念を抱えながら、
死と隣り合わせで、懸命に足掻いて生きている。
王とは、人とは、如何にあるべきかを考えさせられる。

次第に本心を見せていく桂雅の弱さと人間臭さが魅力的だった。
鮮血王のその後をすっきりと魅せる終わり方が美しくて好き。


(欲を言えば、倍のサイズで描くにも耐えられるボリュームのシナリオだったと思うので、もっとたくさん読みたかったです)