金色の眸に映る世界

秋保千代子

一日目(1) 捕まった娘

「おまえに決めた」


 青年はそう言った。

 真っ直ぐに覗き込んでくるその顔は、眉目秀麗という言葉が相応ふさわしい。眸は、深い水の色。二つ揃えばさぞや美しかろうに、左側は瀟洒しょうしゃな眼帯で覆われていた。

 身にまとう衣もまた、細かな光を湛え、腕が揺れるのに合わせてしゃらりと鳴る、実に高価な物だ。


 対する自分はどうだろう。

 麻の衣は汗と血と泥でぐしゃぐしゃで、丹精を尽くした刺繍は見る影もない。邪魔だからと肩上で切り落としてしまった髪はぼさぼさ。掌も頬も、擦り傷と切り傷がいっぱい付いている。

 こんな姿を見つめられるのは、惨めだし、怖いし、逃げ出したくて堪らない。


 だけど、それは叶わない。

 こんな小娘に一体何の用があるというのか、両手両足には枷がめられ、自分の力で歩くことすら許されない。

 伸ばされた手ですいっと顎を持ち上げられ、彼女は青年の視線からいよいよ逃れられなくなった。

 カチカチと奥歯が鳴る。

 それすらも楽しそうに、彼は頬を綻ばせ、唇を寄せてきた。

 荒れた唇に、柔らかい熱を持ったそれが重なる。


「我が子を産め。おまえはい母となる」



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