倭寇外伝「影流、海をわたる」

倭寇とはいうが、真の倭人は十の三、そのじつ七割の明人が、「倭の服を着用、倭の旗印を押したて」、大陸東岸を荒らしまわった。
明代後期、倭寇が跳梁した浙江で、明将戚継光は日本の『影流之目録』を入手する。持ち主を捜すと、陰流の創始者・愛洲移香斎の庶子、愛洲余香斎が名乗り出た。
日本の侍は、胡蝶が舞うように転々と軽快に移動する。猿(ましら)のように一丈あまりも跳躍し、光が閃くようにまっすぐ突き進む。神業のごとき日本の影流兵法に学んで戚家軍を鍛え直し、倭寇を撲滅するのだ。