エンタメに徹する姿勢に感嘆! お手本のようなライトファンタジー

率直に言って、読了して感嘆せずに居られませんでした。
コメディベースの作品なので、ついついネタレビューを書きたくなる誘惑に駆られますが、あえて真面目に行こうと思います(笑)。

ジャンル的には、いわゆる異世界ライトファンタジーに分類して問題ないでしょう。
他作品と差別化されている部分は、「下ネタ」が舞台となっている異世界で重要な異能要素と位置付けられているところ。
登場人物たちの口走った下ネタが様々な形で効果を発揮し、敵を倒す魔法や特技になったりアイテムを強化したりする設定なのですね。

それで、ひょっとするとこれを読んで、ただノリと勢いで書かれたWebノベルだと誤解する方がおられるかもしれないのですが(いや仮にそうだとしたら、それはそれで逆にとんでもないセンスだと思うんですが)、冷静に目を通すと作者さんのWebラノベ作劇における見事なバランス感覚が窺える内容になっていると思います。

Web上で閲覧した際に気軽にスイスイ読める文体、一話当たりの手軽な文字数とその中でちゃんと起伏を付ける技術、早い段階から作品の方向性を読者へ明示したわかりやすさ、終始一貫してターゲット層を裏切らない物語のテイスト、しかも常に安定して笑えるギャグの質……

ひたすら想定読者のニーズを意識し、全体の品質管理に労を惜しまない姿勢が隅々に垣間見れます。
読み手を喜ばせるために、エンターテイメントに徹している作者さんの意識の高さには、頭が下がる思いです。

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