涼宮ハルヒになりたかった女の子の話(短編)

作者 蒼舵

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★★★ Excellent!!!

キョンの語り口を彷彿とさせるモノローグ、オタクなら知ってるだろと言わんばかりのパロディー、ハルヒ好きなら一度は考える現実的な社会性。
それらがギュッと詰まって紡がれる、2人の物語。
作中には涼宮ハルヒも、朝比奈みくるも、長門有希も出てきやしない。それでもこれはハルヒの物語だ。
知ってるか?ハルヒに人生を振り回されたのは、世界規模で大勢いるんだぜ?次元の壁を超えてな!
だからこれは、やっぱり涼宮ハルヒの物語。最高です。

★★★ Excellent!!!

物語的には『涼宮ハルヒの憂鬱』からSF要素を抜き、さくっと終わらせた短編といったところ。テーマは原作と全く同じなので、そういった面でのオリジナリティはほぼありません。

でも、だからこそ『作者にとって、ハルヒはこういう話だったよ』という作者の考えや価値観がストレートに伝わって、気持ちのいい作品でした。
『ハルヒ』にはSF要素とかキャラ萌え要素とか様々な面白さがあるけど、一番大事で美しいテーマは、この作品で描かれていることと同一だと思いますし、そこを大事に思える作者はきっといい人なんだろうなと思いました。

物語としてはもっと緩急をつけるべきだと思いましたが(特に最後は、日常的なものでいいのでもっと何かあるべきだと思う)、個人的にこういった作者の価値観が伝わる作品が大好きなので星三つにしました。

みんな、自分の好きなものや好きなことを、この作品のように物語にして誰かに伝えるようになるといいな、と思いました。

作品レビューとしては余談ですが、近況ノートを見てハルヒの大ファンということがよく分かり、いち作家としてもとても応援したくなりました。ぜひぜひがんばってください!

★★★ Excellent!!!

「涼宮ハルヒになりたかった女の子の話」

このタイトルを見て、すぐさま読もうとしている自分がいました。なぜなら、高校1年生の頃の自分は「涼宮ハルヒに会いたかった男の子」だったから。

涼宮ハルヒの憂鬱を初めて見たのは、中学3年生の時。思春期特有の正体不明な閉塞感に押しつぶされていた自分は、涼宮ハルヒというキャラクターに強烈に引き付けられた。ちょうど東中に通っていた俺は、北校と略せる高校を受験した。

北校に入学し、新しいクラスルームに入る。
俺は涼宮ハルヒを探した。いなかった。
自己紹介で、異世界人や宇宙人を探す女の子はいなかった。
アニメはアニメで現実は現実。
そんな当たり前のことを実感した自分は、軽く絶望した。

しかし、俺はまだかすかな希望を捨てれずにいた。
生徒会や音楽サークルや文芸部などに入り、涼宮ハルヒを探した。

生徒会に微かにSOS団的な匂いを感じたが、流行りのアニメの用語を使ってボケたり、ツッコミを入れたりしてじゃれているだけのオタクの集まりだった。気持ち悪、て思った。

そして、本気で涼宮ハルヒを探して、絶望してる自分も気持ち悪いと思った。ハルヒ探しを辞めた。

それからの高校3年間はバンドをやったり、生徒会室で麻雀したり、彼女作ったり、たくさん勉強したり、ハルヒがいなくても満ち足りた学生生活を送った。

「涼宮ハルヒ」という言葉を聴くと、希望や絶望や懐かしさがごちゃまぜになった不思議な感情を抱く。


文才もないし、こういう自分語りをレビューに書いていいのかわからんけど、田中さんの気持ちが痛いほど理解できる自分がいました。

「涼宮ハルヒ」って俺にとってなんなのか。考えてみようと思います。
良いきっかけになりました。ありがとう。

★★ Very Good!!

高校の時、たった一人でも心を通わせる信頼できる仲間がいれば、青春というものは生まれる。と思います。

涼宮ハルヒについてはタイトルぐらいしか知らず、実際読んだのは「涼宮ハルヒの秘話」しかなくて、中学時代の主人公と佐々木という女子の会話が面白いと思ったくらいです。

なので、☆は2つです。
涼宮ハルヒ本編を知っていれば☆3でした。

★★★ Excellent!!!

誰でも、一度はきっと夢見たであろう「特別になること」
そんな特別な存在になれなかった者達のリアルが描かれている作品。
恐らく一部の人達の心を痛々しいまでにエグることは間違いない。
ハルヒを知っている人も知らない人にもぜひとも読んで頂きたい心に響く一作である。

★★★ Excellent!!!

いくら憧れて真似したところで、現実にはライトノベルみたいなことはおこりっこない。そんな現実と理想とのギャップ。思春期特有の焦燥感に胸が苦しくなりました。しかし、この爽やかなオチには思わずうなってしまいました。恋愛ものだけどくどくない、それでいてキュンとくる、そんなお話です。

★★ Very Good!!

この作品はハルヒをネタにしつつも現実の残酷さを
つきつけている。
現実とはこんなものだなと。
作中から止めどないハルヒ愛は感じた。

語り手で主人公のモノローグとその性格や主人公の
名前が作中に一切登場しないなど、すごくキョンに
似ている部分がありますね。

オチが少し弱いような気もするけどちょっと空いた
時間でさくっと読めるという点でよかったかな。

★★★ Excellent!!!

青春ジュブナイルSFの正統的後継者たる「涼宮ハルヒの憂鬱」を、愛してやまない事が、ひしひしと伝わる佳作。
私自身、ハルヒが大好きでたまらなかっただけに、田中さんを見つめる主人公の切ない、もどかしい気持ちがよくわかる。この二人の行く末をもっと見たい。就中、もっと詳しく知りたい。
これがプロローグであって、彼らのSSS団の活躍が続いていい。

★★★ Excellent!!!

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作も可としているこのサイト--カクヨムだからこそ最も光る小説だと思いました。


語り口も一人称、どことなくキョンを彷彿させる主人公。(といってもキャラはキョンと似て非なる)

ハルヒのようにはならない現実というこの世界の無慈悲さ、実態。その中で生きていくということ。

個人的に共感するところもあり、また苦々しく感じるところもありました。


身につまされるものがあり、しかしその苦さがこそが良い。

そう心から思える作品でした。

Good!

今の二十代だったら名前くらいは誰だって知っている『涼宮ハルヒの憂鬱』。そして、読んだ人間なら誰もが一度はきっと感じたことがあるテーマを扱った作品。
ラストの落とし方がとても好みだった。だからこそ、途中・・・・・・五話目でサラッと済まされてしまった「涼宮ハルヒのようには行かなかった青春」を具体的に読みたかったと思ってしまった。少しだけ、残念である。
この子たちの葛藤を、もうちょっと一緒に味わいたかった。

★★★ Excellent!!!

――最悪。諦めてた絶望に泥を塗りこんで来やがって。



あの頃はハルヒになりたいと思っていた。
そのために色々なことをやってみたいと考えていたけど、自分はあそこまでエキセントリックにはなりきれなかったし、周囲にその願いが読み取られるなんて思えなかったし、美少女ではなかったし、そしてなによりキョンがいなかった。

ハルヒになりたいという夢は一人では叶えることがどうしても無理なことで、長門や古泉や朝比奈さんになりたいと思う人はいるはずがないのだった。ましてやキョンはだ。
そんな絶望を今更10年も経ってから思い出させるなんて酷い作品だ。
叶うことがありうる幸せな夢を持っていた幸せな人間が、現実に適応なんてしやがった人間が、私たちのことを見透かしてるんじゃない。そんなのは――

というわけで星3です。
もう一度、キョンのいないこの世界全てのハルヒ達に幸あれ。

★★ Very Good!!

読んでいると胸の奥がむず痒くなるこの感覚。たまらない!

充実したものではないかもしれないけれど、田中真由子の日常もきっと涼宮ハルヒが過ごしたものと同じ「青春」と呼べるものなんじゃないのかな。(ハルヒ読んだ事無いのでただの憶測ですが……)

ラストが最高でした。とても好き!

★★★ Excellent!!!

そして俺はそーいう優しい世界が大好物だ! 良かったぁー! 「俺」はいい奴! 世界がいい奴に満ちますように。

いわゆるネットスラングにおける中二病、みたいなものに罹患してもう長い俺としては、伊東デイズ氏のレビューを読んでもこの話を読むことに恐れがあった。正直言ってびびってた。俺の魂が殺されるかもしれないと思ったからだ。
でも読まない訳にはいかない。部屋の片隅でカピバラのぬいぐるみを抱いてがたがた震えながらそれでも読んだ。

……よかったー! 世界はまだ優しかった。

この物語はまごうことなくここから始まるのだ。優しくて暖かい世界がここから!

そういう訳で、魂を殺されるかもしれないと怯える君も安心してほしい。大丈夫。いい話でした。

★★★ Excellent!!!

 亭主の好きな赤烏帽子、って諺がありますが。
あれですかねぇ。幸い田中さんも症状が軽そうだし、主人公が一緒になって合わせているうちに普通の幸せを見つけて、目が覚めるかもしれません。
 で、数年たって振り返る黒歴史になっていく。幸せな大人には真っ黒な黒歴史、というのが定番ですから、彼女もそうなって欲しいものです。
(←と、登場人物に感情移入してしまうほど心理描写が上手い)

 またタイトルがストレートで、それだけに田中さんの孤立が深く胸を打ちます。
ハルヒを知らなくても知っていても、読者を引き込むだけの作品としての魅力があります。
一方で、作者さまの創作、創作物への深い愛が感じられる作品でもありました。

楽しいひとときに感謝いたします。