人はなぜ遊ぶのか、人はなぜ生きるのか

 未来の世界の未来のゲーマーの語る未来のクソゲーたち。ハチャメチャなアイデアに満ちた未来のゲームを語りながら、そのゲームの背景としての未来の歴史、未来の風景も描写されていく。ゲームレビューという、読者への負荷の軽い文章形式で、バカSF、パロディSF、文明批評SFのような楽しさをしっかり味わうことができます。
 そして、笑いながら読み進めていくにつれて浮かび上がってくるのは、語り手自身の、ゲームしか生きる目的を見出だせなかった一人の老人の、孤独な生涯。後半は、ゲームレビューがさながら闘病記のような様相を呈し始めます。
 「人はなぜ遊ぶのか」「人はなぜ生きるのか」。そんな二つの問いを、架空のゲームレビューというトリッキーな形式でつなげようとした、無茶な試みともいえる作品。ゲームが大好きな人、遊びが大好きな人、大好きだからこそ、「でもこれって無意味なんだろうか」という思いが頭をかすめてしまう人。そんな人は、無茶とはいえ果敢な試みである本作に、心を動かされるはずです。
 この作品の語り手は、クソゲーと見なされたゲームを頑ななまでに擁護します。それは、他人からは無価値だと見なされるような人生をも守ろうとする、優しい祈りに似ています。

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