たったひとつのドットが、希望になる。——異色の実験的作品。

ひねくれた主人公とその幼なじみによる序盤のラブコメっぽいやりとりから、
東西の神様が跋扈する『いんたあねっつ』の奇妙な世界へ。
ファンタジーもラブコメもシリアスなドラマも盛り込まれた、
たいへん読み応えのある贅沢な作品です。

本作品の最大の特徴は、中盤から始まる奇抜な文章表現の数々でしょう。
具体的にどんな表現が行われているかは読んでみてからのお楽しみですが、
ここまでやってる作品はカクヨムでも『ネ申ネト』だけだと思います。
最大の特色は最大の難点でもあります。
大きな驚きと新鮮さを得られる一方で、物語への没入感を損なってしまうのです。

感情を伝える『Emotion mail』など、SF的なアイデアまで駆使されるのですが、
賑やかな神様たちがはしゃぎまくって『エモメ』を使いまくるたびに、
その奇抜な表現を理解しようとして私の読書がピタリと止まってしまいます。
特に神様の『アン』や『ブミヤ』が出てくると、
私の読書テンポがボロボロに乱されてストレスがピークに。
言ってることがさっぱり頭に入ってこねーよ!
終盤のエピソード全体に渡る特殊な文章表現は、一目見れば間違いなく驚きますが、
もう小説の枠をはみ出してしまっていると思います。
良くも悪くも、普通の読書をさせてくれない作品なんです。

かといって、私はこの難点を修正してほしいと思っているわけでは決してなくて、
この特色を失ってしまったらこれはもはや『ネ申ネト』ではなくなってしまうと思います。
面白い設定や世界観、丁寧に織り込まれた伏線、表現は斬新だけどひたすら読みにくい!
この作品に必要なのは、読みやすい作品への改稿というより、
この斬新さを理解できる読者なのではないでしょうか。
そんなわけであなたもぜひ読んで理解者になってみてください。

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