駄目だこの姉……早く何とかしないと……!

卓越した筆致で描かれる、姉妹で百合、そしてスプラッタ。
この作品のモチーフを見た時、私のために書かれたのかと思いそうになりました。
同作者の『ヒトになるまで待ちましょう』に引き続いて、
人外キャラ好きの作者の嗜好がたっぷり盛り込まれた作品です。

なんだこの姉……。精神が明らかに人外だ……。
人間を喰らう怪物『鬼憑き』の存在も霞むようなド変態で頼りがいのある姉が、
妹を守り、そして愛でるために奔走します。

そして、ディティールたっぷりに語られる陸上シーン。
小説にはこういう説得力のある描写がぜひとも欲しいと思います。
誰かの生き様を描くとき、そこには読者の知らない世界、
しかしファンタジーではないリアルな世界が必ずあるはずなのです。

テーマが特殊なので万人向けとは言いませんし、17万字とかなりの長編ですが、
こういった趣味が合いそうな人ならぜひ一気読みを。