コーヒーと絵の具の、混ざった空気のあるカフェへ。

 教育実習を終えて、教員採用試験に落ちた女性主人公は、隣のカフェへ通っていた。そのカフェに、美しいけれど毒舌な絵描きが引っ越してくる。カフェなのに、いつも絵を描くその人物のせいで、コーヒーの香りに絵の具の香りが混ざっていた。
 同じゼミの皆が教員試験を通ったことで、主人公は一人で悩んでいた。文章を書くことについて。就職活動をしなければならないことについて。ゼミの先生は気にかけてくれるが、他の人から取り残された感覚はなくならない。卒業論文だって、言い訳をしたまま、書こうとしていなかった。
 
 無意味さに意味を足していくだけの文章。
 乾かすために描かれる絵。
 幻想的な雰囲気の中で、コーヒーと絵の具の匂いが交じり合う。

 美しい作品でした。
 是非、御一読下さい。

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