フラスコで飼う星の話。

五水井ラグ

 

 例えばセピア調で撮るのがちょうどピントの合いそうなこしゃれたレンガの壁に、古ぼけたモノクロ写真を六枚とか七枚とか木製の額に入れてはぶら下げてみて、ちょっとさみしげなピアノのバラッドなどかけて本を読む。その本というのはお店の一角に何冊かあるもので、誰かが大切にしている物語を棚へ置き、代わりにどれか持ち出していくから、くるりくるりと糸をたぐりよせるみたいに人と人の記憶を結び歩いて私のもとに今在るというだけの、ぼろぼろのページに残る涙の跡が私をいちじの通過地点にしているというだけの、とても素敵な古書である。お客さんのいないときは店長が趣味の最新型パソコンを三台同時にフル稼働させ、0と1の記号を複雑に織りまぜて、彼の作るコーヒーと同じくらい深い味。店内はほどよく花や葉っぱを飾ったり機械の無骨さを放置したりしてアンバランスさがバランスよく保たれ、背もたれの優しい木に寄りかかってすぅうとコーヒーの香りを堪能するのにもってこいだ。


 ――そういうこぢんまりしたカフェが私の家の隣にあったとして、一番安く一番美味しいオリジナルブレンドをほとんど毎日飲みに行っていたとして、ある日あの空間の真ん中に、カンバスが彩られる瞬間の絵の香りがし始めたとして、それはつまり私の生活がすこぅしだけ、すこぅしだけ変わるってことを意味していた。


 隣に引っ越してきたのは、綺麗で毒舌な絵描きの青年だった。


       ◆


「死ぬ確率は一生に一度だけだろう。臆するな、挑め」


 と、そう彼は言う。彼にしてはやわらかいもの言いだ。ペインティングナイフで容赦なく絵の具を切り裂き、ついでに私を言葉で刺しながらカンバスに無音の風を起こしている。私はといえば、数週間進まぬままの卒業論文を抱えて頭も同時に抱えている。ほかにも問題をひとつやふたつ抱えている。ふむ。


「怖いんじゃなくて、やる気がわかないだけですよ」


「貴方はなにに対しても無気力だな。上手に呼吸できているか? まだ死んでいないところを見ると、心臓を動かすやる気はそれなりにわいているらしいな?」


「いやあの意味分かんないんですけど……生きてますって」


「それは残念だ」


「……。ただ私が言いたいのは、なにかを書きたいって気持ちが遠のいちゃってるってことなんです。卒論のストーリーは全部決まってますが、一文字も進みません」


「卒論をサボる言い訳作りで大忙しか」


「真面目に言ってるんですけど! 『惰眠を貪る部活、略して文芸部!』を書いてて書籍化候補になってた二年前は、熱意のかたまりみたいなものでした。今は私、書かずとも生きていけます。小説書くより寝たくなります。向いてないんです。でしょ?」


「……」


「神崎康介さんはいつも一心不乱に絵を描いていますよね。スランプになってもまたすぐに描きだしますよね。描かないと苦しそうで、苦しくても描きたくて、ああ、そんなのが芸術なんだなって」


「ふん」


 びちゃっとカンバスを叩く水っぽい音がした。彼は明らかに嘲りの調子で私を笑い飛ばし、テレピンへ筆をぶっこんだ。つんと独特な匂いが広がって心地よい。私はソーサーにティースプーンを載せ、コーヒーカップから立ちのぼる湯気を見つめていた。


 文字の羅列をどんどん創り出して、無意味なことに無意味な意味を持たせて、なにかできるようになった気持ちを作ってる。


 私はニセモノの物書きたまごだ。書く、にピントを合わせられないできそこないのうちの一人だ。ひどく子どもじみているなぁと解ってた。


「貴方に一言やろう」


「は、はい」


「こころして聞け」


「はあ」


 リアルの価値。


 リアルの価値。


 リアルの価値。


 リアルの価値。


「――うるさいから黙秘権を使ってくれ。むしろ失せろ」


「え」


 紺は宇宙の色。青と黒の途中。大人になると途中が増えるね、白と黒をくっきり分けられなくてグレー。カンバスに星を描きこんでいた筆を放り出し、宇宙色の一面にスカイブルーをぶちまける。彼のやることはいつも唐突だ。


「猛烈に反省しろ、此処は客お断りの店だ。特にピーチクパーチクうるさい客を私は個人的にとても出禁にしたい」


「……」


「おぅいコースケー、いそうろうの分際で勝手にオレの客追い払ってんじゃねぇぞー、つうか店のど真ん中で絵の具使うなっつってんだろ臭ぇんだよ」


「ち。店長の分際でやかましい」


「おいコースケよ。ばっちし聞こえてんぞ」


 あああ私はどうかしていたんだ、と猛烈に反省した。もしもこれが小説だったならこんなにひとりよがりな展開ってありえないし、普段私はこんなこと吐露する人間ではない、迷惑かけてまで彼に言う事柄じゃなかった。


「……出ます」


 執筆道具であるスマートフォンを握りしめ、私は飲みかけのコーヒーを置き去りに席から去った。まずは順を追って綴る必要があると思った。大学四年生の女の子が教育実習を終えて、教採つまりは教員採用試験も終えて、合否通知の封筒をポストに見つけた日がスタートだ。どうせ落ちていると考えつつも開ける勇気が出ず、A4の茶色い封筒を手にふらふらと隣のカフェへ入った。夏真っ最中のギラついた日差しとそして気温は、地球上の生物全部をいっぺんに殺しにかかっているくらいとち狂っていて、当然のように私はアイスコーヒーを注文したのだった。大量の汗をタオルでぬぐい、冷房とバラッドのかかる店内でぼぅっと酸素を眺めていた。からだが冷えていって頭も冷めていく。びりべりべりり。薄い紙が一枚入っていて短い文面が印刷されていて、中央あたりに、


「見事不合格だな。で、これはなんの通知だ?」


 初めましての代わりにしては不躾なことをのたまう綺麗な青年が立っていた。否、ほんとうは綺麗なんてものじゃなかった。この手の生物は私の苦手とするところだった。手紙をテーブルへ伏せた。


 コースターとグラスを置く彼の横顔はギョッとするほど冷たい美しさだ。美しいは冷たい。私は丁寧な言葉づかいに動揺を隠してそっと挨拶を吐き出した。


「初めまして。新しいアルバイトの方ですか? 此処のアルバイトなんて初めて見ました」


「いや、いそうろうだ。昨日越してきた」


「そうなんですか。どうも」


 コーヒーを受け取って口もとへ。高校時代の楽しかった部活を思い出してかすかにさみしいような悔しいような不安な気持ちになった。カフェの中央には昨日までなかった道具がいきなりたくさん並べられていて、イーゼルやらパレットやら油壺やらあの独特な美術部の匂いが懐かしくただよった。ぎゅ、とこころは急激にしぼみきり、私の情けなさを代表する茶色い封筒がその途端気狂いじみた笑い声をたてた。甲高い悲鳴が耳を荒々しく引っ掻きまわす。私は窒息しそうになった。


 この次はこんなふうだった。「電話が嫌いだと? ふん。ならば電話と面接を避けて生きていくうまい方法でも考案しろ。就活の代わりにホームレスになるか? 自殺してみるのはどうだ? どちらにしても全力で応援させて頂こう」。こういうのもあった。「自分の容姿が嫌なのならなにか努力すればいい。気にしていないと言いつつコンプレックスにまみれて、滑稽にもほどがあるぞ? 徹底的に気にしろ。もしくは徹底的に気にするな。くだらん悩みに時間を浪費する貴方と違い、私は絵の注文が多くて忙しいのでな、悩みにつき合ってやれん」。ついでにこうだ。「いい加減に現実を見ろ。まさか文芸創作のゼミで小説を書いたからって、それで食っていけるなどと浅はかことは考えていまい? 馬鹿馬鹿しい幻にかまけていないでじゃんじゃん履歴書を書け。ああ、この店に長時間居座って書く気なら路肩で這いつくばって書く方がマシだと思えるよう調教してやるからそのつもりで」。要するに総じて「うるさい客は立入禁止だ」という意味なのだった。


 私は白っぽいカンバスを一瞥した。


「また違う絵を描いていますね。昨日の紺色のはもう完成したんですか」


「正気か? 乾かすためにほかの絵を描いているに決まってる」


 ぶぶぶ、と左手の中で執筆道具がからだを震わせた。五月中旬母校で一緒に教育実習をした元同級生たちがLINEにて文化祭の集合時間と場所について相談し始めた。もちろん私は行かない。油断していると誰かと挨拶を交わすことさえ億劫になっていく。


 晩夏のうだるような、退廃しきれない絶望みたいな、そういうものにのまれてしまうんだ、ひかりにはどのみち追いつけない。私をいないことにしたかった、とてもそう、したかった。


 ――そんなこんなで彼と出逢ってから二ヶ月が経とうとしている。


       ◆


 好きな色。一、紫。秘密めいた魅惑の色。凛とした強さ。私に無いもの。二、透明。在るか無いのか確かでない曖昧さの魅力。透き通った切なさのような。三、紺。青と黒の真ん中あたり。宇宙。


 十月は少し遅めの新学期初日で、シルバーウィークを通り過ぎてしばしという平日らしい朝だった。すっかり新しい季節に慣れたサラリーマンたちが疲れた顔で曇り空の真下を電車に揺られている。月が冬に近づいていくにつれて人間の服装は黒くなり、やがて積もる雪のためコートとスーツで喪に服す。会社員よりも高校生よりも長くて他大学と比べてもやっぱり長かった夏休みに別れを告げ、私は久々にイヤホンで耳を塞いだ。駅を出ると小雨が降っていたので、大事な執筆道具もといスマートフォンをポケットにねじこんだ。声がした。


「久しぶり! 夏休みどうだった? ……就活とかは?」


「私あんまりやってないよーやばいよね」


「そ、そうなんだ! まだ全然平気じゃん! んーと、あのね、ウチ実は……来週内定式なんだよね。ね! ゼミさぼっても大丈夫だと思う!? まずいかな!?」


「うお! もちろん大丈夫だろ、おめでとう!」


 訊いてくるのだけれど質問したいんじゃなく実は自分のことを話したがっている、という複雑な状態の友だちが数人いることが、この時期の大学四年生の特徴であった。


 ふたり並んで大学までの歩道を歩いた。美人じゃないその子は下顎のでっぱった顔を丁寧にメイクして来ていて、上手に着こなしたおしゃれな服を濡らさぬよう慎重に歩を進めた。可愛いと思った。私のジーパンへ雨がはねた。


 教室で待っていたアカデミックアドバイザーの先生は、集まった二十人ほどの学生一人ひとりに簡単な面接をしながら成績と履修状況の確認をした。彼は教育実習のときに研究授業に来てくれた先生でもあり、私のよくも悪くもない平均的な成績を見たあとでそちらに話を持っていった。


「ちゃんとサイトには登録したの? ××さんのことだしまだあんまり動いてないんでしょ。高校の教員なら県に登録、中学なら四つの地区のうち通いやすい場所を選んで登録しておけば、二月か三月頃に臨時採用の電話があるかもしれない……」


 セーラームーンになれない今はジェーン・ドゥだから、銀河って名前のついた私の執筆道具をかたく握りしめ、文を紡ぐことのみ考えた。GALAXY Note Edgeは私に名前をくれる。「フラスコで飼う星の話」が今のところのそれだ。インターネット上でしか会ったことの無い友だちが綺麗だねと言ってくれた名前だ。GALAXYで出逢った友だちとGALAXYから出ないで生きていけたらどんなにいいだろう。


「……とにかくするの、登録しなきゃ電話は来ないんだよ。頑張ろう」


「はい」


 リアルの価値。


 リアルの価値。


 リアルの価値。


 リアルの価値。


「分からないことは先生が手伝ってあげるからなんでも訊きなさい、××さん」


「ありがとうございます」


 宝石みたいだった。異世界の人だよ、此処にいる人間みんな。私だけほんとうはアクリルアイスなの。石になれないの……


 ……嫌いな自分の部品ばかり巨大だ。


       ◆


「客は立入禁止」


「じゃ座って入ります」


「誰がうまいこと言えと」


「今日はホットください」


 初めて会ったときからちっとも完成しない例の宇宙色がイーゼルに載せてあって、相変わらず鳥肌ものの綺麗さで彼が筆を走らせていた。長めの黒髪が彼の腕の動きに合わせて揺れたり横顔を隠したりした。まだ誰にも踏まれていない生まれたての雪の朝に、鮮血をひとつぶぽとん、落としこんだような静かなあやうさだった。テレピンに薄められた油絵具が遠慮がちに透き通った軌道を描き、香りをまいてカンバスに重なり合った。


 私はとても切羽詰っていた。


「この前言ったこと覚えてますか」


 究極なまでに平凡なかたちをしたパズルが、すっきりおさまることの可能な場所がこの世界には腐るほど在るってことを私はたぶん知っているのだ。宇宙に散らばった目に見えない素粒子とか、手巻きの機械式腕時計の中でまわる歯車とか、pixivの色を構成するPCのピクセルとか、ツイート数最高記録を更新した瞬間のひとつの「バルス」とか、多くのもののうちのたった一個が地球の一部分となって整ったら、まぁるい地平線のできあがりだ。ちいさい頃に夢見ていたものは何十光年も離れていたって一番だってそう、そう言える強くておおきな存在だった。カンバスでコンパスを使うのが得意な神崎康介になりたかった。


「――私は書かずとも生きていけるんです! 書かない日があってもまったく健康なんです! これって向いてないってことですよね? もうやめるべきでしょう? リクナビに書いてあるボーダーライン目指して、現実世界で使用できるリアルの価値を育てなくちゃあ」


「ああ」


 何故こんなに美しいんだろう。白い肌も伏せた瞳も低く落ちつく声も、筆を握る左手の指先もみなどうしようもなく美しい。私に見えない酸素が彼には見えているのかもしれない。やめてしまえと言ってほしかった。


「その通りだ××。貴方は小説を書くのに向かない。やめてしまえ」


 血管に空気を注射したら死ぬんです。「からっぽ」はひとを殺す。この代替可能な物書きもどきの、価値とは。価値とは。価値とは。星さえろくに食っていけない身で、私が書くものはなにをとらえるのか。やめてしまえよ。誰も気づかないから。


       ◆


 隣のカフェに行かなくなって一ヶ月近くが過ぎた。秋を超え寒さは濃くなり、溜め息が白く曇る。かじかんだ手におもちゃを握りながらだらだらコンビニエンスストアへ徒歩二十五分の道を歩き始めた。寝静まった家をそうっと出発し、わざわざアルバイトだなんて楽しくないに決まっていた。


 午前五時半のアスファルトの上は夜中とほぼ同じ暗さで、月も見えた。街灯は途切れ途切れにぼんやりしたひかりを投げかけてくれた。


 スタイラスペンを落とさないように指に挟んでおもちゃの画面を叩く。薄暗い道に長方形のひかりがともった。


 ――分からなくても心配するな。この美術部は初心者が多い。どうせなにもかも最初から教えるつもりだよ。


 私は早朝の地球を歩きつつなんとなくカフェの窓へ視線をむけて、とうに香りの消えたキンモクセイとか枝だけのさみしい桜とか、ほか名も知らない草木のあいだに見てはいけないものをちらっと見つけてしまって、無言で叫んで、そして思わず立ち尽くした。


 ――道具は部室のを使ってね。簡単に説明すると、これは筆でこれがパレット、あ、この紙のパレットは使い捨てタイプなんだ。絵の具をつけた紙パレットは普通の燃えるゴミに捨てちゃダメだから気をつけてな。


 時計がなければ時間を見失ってしまいそうな暗い朝に私は立ちどまって、カフェの窓ガラスをへだてたあっち側を見つめ、彼の横顔にくぎづけになった。


 ――んで、これがテレピン。絵の下描きをするとき絵の具をこの油で水彩みたいに薄めて使うんだよ。ある程度下描きが終わったら、テレピンの代わりに速乾メディウムを使う。絵の具へ一対一でメディウムをまぜるんだ。ぶ厚く塗れ。油絵に慣れない奴はよくやるんだけど、油絵の具をいつまでもテレピンで水彩っぽく薄っぺらに描くと物足りない出来になるぞ。


 彼は閑散とした店内で例の宇宙色の絵を前に座っていた。出逢った日からずっと完成しなくて、乾かすためにほかの絵を描くと言って、違う絵がいくつもできあがっていって、それでもこれだけがいつも此処に在った。三ヶ月以上経っているのにいつだってこのカンバスは水彩のごとく透き通り、テレピンで描き進めて乾かして、またその上にテレピンで下描きをしては、永遠に下描きを重ねているのだ。


 下描きの下の下描きの下。


 ちりぃん、とドアにかかった鈴が鳴ったので神崎康介は呆然と顔をあげた。長い前髪の隙間から伏し目がちの視線を向け、私と目が合うと囁くようにぽつんと言った。


「描きたい絵が、有る。だが私には、難しい」


「はい」


「悔しい。人間なんて所詮みんな一個の星の地面に並んで立ってるだけのくせして、何故ひとの頭踏んだり頭踏まれたりしてると思うんだろう、なぁ……」


「はい」


「比べることでないのは解ってる」


「はい」


「でも悔しい」


「はい」


「描かずに息をしてた頃には、戻れない……」


「戻れない……」


 銀河という名前のスマートフォンが、私の綴った文章を忠実に表示してくれているのが見えた。紙に対応していないスタイラスペンが、スマートフォンになら書かせてあげるよと私をせかす。


 なんでもいい、友だちより下手でも、必要とされなくても、買ってくれる人がいなくても、私が書きたいならなんでもいいんだ。例えば知らない誰かが残していった本たちと意地悪な絵描きに会いたくて、毎日通うコーヒーのお店。どうでもいい会話なんかをしながらぼろぼろのページをめくり、絵の具の匂いの懐かしい幸福に酔う。パソコンをいじくるのが大好きな変わった店長と、綺麗なくせに毒を吐く青年がいて、ちょっと喧嘩しながら仲よく住んでる。


 そういうこぢんまりしたカフェが私の家の隣にあったとして、一番安く一番美味しいオリジナルブレンドをほとんど毎日飲みに行っていたとして、ある日あの空間の真ん中に、カンバスを破く瞬間の涙の香りがし始めたとして、それはつまり私の生活がすこぅしだけ、すこぅしだけ変わるってことを意味した、想像の物語だった。


 繋がりを絶ちたくなくて無意味なやりとりをしていた、実習生のLINEも近頃は鳴らなくなり、繋がりというのはくっつけるときだけ異様に大変であってにしてはあっさりと切れてしまうからそれはそれでいいなと思う。短編小説を書き終える際のほのかな喪失感に少し似ている。みんないい人だった。いい人だっただけでは、ずっと私の人生に登場し続ける権利が無い。逆にときには実在しない人間が人生にい続けることだって珍しくなくて、亡くなった先輩や見えない友だちが隣に住み、私たちを翻弄しているんだ。物書きたまごが自分の作ったキャラクターに支えられることもそんなに少ないことじゃない。


 隣人ってほんとう不思議だね。


 では此処で、そらそろさよならしよう。おやすみと言うよりはさよなら、これは切り取り線かもしれないけれど、また明日会いましょう。


END.

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フラスコで飼う星の話。 五水井ラグ @KwonRann

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