第50話 読まれなくても書き続けたいお話に辿り着くには
ようやく連載の再開に漕ぎ着けました。
まだ完全に復活していませんが、それでも、とにかくいま書いているお話は最後まで書き終えて、それから次のことを考えようというところまで来ました。ご心配下さった皆様、お気持ちに感謝し御礼を申し上げます。
読まれないことがなぜそこまで気になるのか、自問自答しました。残念ながら「それでもあたしはバンバン書きます!」なんて若い気概はもうありません・笑 人生も折り返しを過ぎたいま、経験値を活かして考えてみました。
書いた以上は読んで欲しい、という欲の部分は一旦脇に置いて、なぜ読まれることをそれほど重要視するようになったのか、心の経過をまずは探ってみました。
当初はただ書く事が楽しくて、脳内妄想と執筆の繰り返しを心から楽しんでいたのに、何が原因でそうなったのか。つまり、書く事の意味が「書きたい」よりも、「読まれること」にいつの間にかシフトしてしまっていたのだと気付いたのです。
「書きたい」気持ち以上に「読まれたい」に比重を置くようになった時、技量的な進歩はさておいて、心が求めているのは「書く理由」かなと思いました。自身の思い以上にそんなものが必要になるくらい、書き続けることに疲れてしまったのか、あるいは書く事の意義や意味を見失っていたのか。恐らく両方だと思います。
そこで、しばらく時間を置いてみることにしました。今の連載を終えたらしばし冬眠に入ろうと思います。世の中は春に向かっていますが、ここでのHNのごとく我が身の春(はる)を向かえるためのしばしの休息です。
先日、放牧を宣言したいきものがかりのリーダー、水野良樹さんの書かれた『いきものがたり』を読みました。驚きました。歌詞もメロディーもとてもエネルギッシュで心地よいけれど、グループとしてはどこか飄々とした感じを受けていましたが、彼らが歩んで来たデビューまでの険しい道のり、デビューが決まった後の地を這うような苦しみと努力の10年に頭が下がる思いでした。
そして、こんなにも才気溢れる若きミューズたちでさえこれだけの苦労をしたのだから、私ごときが何を言っておるのか、と情けない思いで一杯になりました。
水野さんはとても文章が上手く、表現も多彩です。重いテーマもさらりと書いて読ませる素晴らしい文才をもっておられます。小説とはまた違った面白さにぐいぐい引き込まれ、分厚い本でしたがあっという間に読み終えました。
いまの私に一番欠けているのは、こういうものかもしれない、と気付かされる点がたくさんありました。小説ではないので、読む読む修行には換算していませんが、こうした読書体験をこれからも続けながら、私なりの未来を模索していこうと思います。
私が書きたいと思っていることの一つは、傍目には天才とか才色兼備とかもてはやされる人たちの秘められた苦悩と成長です。仕事柄、とにかく優秀な方々――全国模試でトップ5に入った、推薦で医学部に入学し総代で挨拶した、全国英語スピーチコンテストで優勝した、18歳で既に4か国語くらいペラペラ、そろばん世界一など――と出会うことが多いのですが、いざ話してみると傍からは分からぬ苦労も努力もされています。
そんな方々の本当の姿を多くの方にお届けし、努力や苦労に無駄なことなど無くて、成功者とされる方々はそれを全面に見せないだけで、みな等しくあるいはそれ以上に頑張って来たのだと、伝えたいのです。拙連載の主人公の一人、舘開人を天才医学生(その後天才小児外科医)に仕立てたのもそれが理由の一つです。
もう一つは、医療や認知症に関連する分野です。医者の天下ではなくなった現在の医療界では、患者はより賢くなることが必要となっていますが、まだまだ素人には分かり難いことが多く説明不足が蔓延しています。また認知症と診断された50代半ばの知人は、世間からの偏見が一番堪えると、著書で現状を公表したいまも苦労を重ねています。この分野はこれからもっと多くの方に知ってもらわねばならぬことが溢れています。きちんと時間を取って取材して、当事者の思いを込めた小説をいずれ書きたいと思っています。
いつのことになるか、まだ分かりませんが、「読まれなくても書きたい」と心から思える話に私自身が辿り着くために、たっぷり冬眠して、春の目覚めを楽しみにしたいと思います。
なお、朗報も一つお供えしておきます♪
本業の方で予想外のオファーを頂き、新年度から月刊誌で連載を担当させて頂くことになりました。来月発売の4月号から1年間です。
最初は耳を疑いました。編集部にも担当さんにも、ほんとに私で良いのですか?と何度も確認してしまったほどです。私の業界では知らぬ人はない専門誌で、名だたる面々が常連執筆者の月刊誌だからです。
昨年末からプロットを組んで一年間の流れを確認し、ようやく先ほど初回号の原稿を提出しました。
小説ではなく本業で連載をすることになるなど、1年前は夢にも思っていませんでした。
そしてもしここで皆さんに出逢って小説修行をする気になっていなかったら、こうは運ばなかったと思うのです。そんな専門誌に自分の書いたものが載るなんて、とビビってしまって、辞退した可能性大です。内容以前に、書く事に臆してしまったとだろうと思います。その点では執筆のご指南を下さった芳賀さん、久保田さん両師匠に心からお礼を申し上げます。有難うございました。
今回のことで、どんなことでも、できることはしておくものだと改めて思いました。それが小説の修行だろうと何だろうと、その時にやろうと心に決めたのならやっておく、その積み重ねに、いま私は生かされています。
カクヨムにお住まいの若いみなさま、どうか目の前の壁が高くても諦めないでください。いつかきっとその壁はみなさんより小さく低くなっています。ご自分の心が求める努力を重ねていたら、いつかきっと。
ちょっとだけ人生の先輩からの餞の言葉でした(#^^#)
お気楽もの書き手帳 はる(haru8) @harutashiro
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