3つの掌編で構成されている幼い記憶の物語。不思議で、でも本当にどこかにありそうなリアリティのある設定と描写(ノンフィクションだと思うので当たり前と言えば当たり前なのですが)に、引き込まれていきます。まるで自分の記憶にある小学校のどこかにも、「すずめの神社」があったような気さえしてくるのです。
私の小学校時代には、「すずめの神社」はありませんでした。教室に入ってきたこともありません。知らないどこかの、誰かのお話。でも、どうしてか堪らなく懐かしい。作品は、セピア色の文体に、清冷なかなしみが流れています。子供の頃の、今はもう忘れてしまった淡い感覚を、少しだけ思い出せたような気がしました。
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