第2話 小学3年生での出来事

ぼくが『すずめの神社』の存在を知ったのは、確か小学3年生の時でした。


ある日の給食が終わって昼休み。

同級生たちは校庭に出てドッジボールなどをするグループ、教室の中で定規などを使った遊びに興じるグループなどに分かれます。

ぼくはと言えば、その頃は大層に読書が好きで、昼休みごとに学級文庫を読みふけったりしておりました。

今の言葉だとぼっちとか言うかもしれない。


その日も本を読んでいたぼくでしたが、ふと目を上げると、教室の隅に皆が集まっているのに気づきました。

何だろうと後ろから覗き込んでみると、人だかりの真ん中に居る子がどうやら雀を手に持っているようです。

話を聞くに、ベランダに落ちていたんだと言う子、ガラスに衝突したんだと言う子、いやボールに当たったんだ、などと言う子が居て、どうなったのかはよく分かりません。

ただ、雀はその子の手の中で、目に涙を浮かべながら、ゆっくりと目を閉じていっているように見えました。


やがてその目が完全に閉じられ、雀が動かなくなると誰かが言いました。

「すずめの神社に行こう」

そうして教室を出て行く皆を追いかけ、ぼくも『すずめの神社』に行くことにしました。


それは、学校のプールと体育館の間にある、物置小屋の脇にありました。


高さ30センチもない小さな鳥居は、花壇か何かを作った残りの木材でしょうか、棒と板切れを組み合わせただけのもの。

それにマジックで「すずめのじんじゃ」と書いてありました。

誰が作ったのかは分かりません。

なんでお墓ではなく神社なのか、その理由も分かりません。


その鳥居の前の地面に雀を寝かせ、皆で手を合わせて何かを祈り、そしてその場を去りました。


雀はそのまま自然に還ったのか、誰かに見つかって適切に処分されたのか、

それとも単に気絶していただけで目を覚まして飛び立ったのか・・・・・・

数日後に見てみると、雀の姿はなく、ただ『すずめの神社』だけがそこに立っていました。


ぼくが小学2年生の時の話は、これで終わりです。

『すずめの神社』というものの存在になんだか不思議な気持ちを感じたことを、今も覚えています。

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