語り手であるマキの、日々の暮らしの中のいたみとしあわせが、叮嚀で豊かな文章表現によって語られています。特に「蛇口から落ちる水が洗剤の泡を押し流し、排水口に消えていく」の一文の表現と、場面への挿しこみ方は素晴らしく、見習いたいと思いました。
また人物の置き方もとても良かったです。康介とマキ、母と伯母とマキ、会社のマキと家のマキ、それらの配置の仕方が絶妙で、それによってマキの微妙で複雑な心境がとてもよく表現されていると思いました。
最後の康介の台詞に、読んでいる私もじんわりと嬉しさがこみ上げてきました。