第4話 10ぺん謝

「この間は、錯乱してすみませんでした……」

 イックは平謝りだった。

「いえ、大丈夫です……完成させてくれましたしね。ありがとうございました」

 そう返す、受取人の表情は固かった。

 たっぷりヌいたので、イックはようやく平常心に戻っていた。

 自分はなにをしていたのか……おなにをしていたのか。

 次の作品を書かなければならない。

「……すみません、ホントに」

「いえ、もういいですから、次もいい作品書いてくださいね。時間ないですよ」

「はい……」

 次のタイトルはもう決まっている。ホラーだ。早速机に向かう。

 ──怪談筆おろし。

 書いた字を眺める……うむ、いい作品になりそうだ。


 ──カリカリカリカリ……カリカリ……


 ──ガタガタガタ……


「先生?」

「ハイッ!」

「何をなさっているんです?」

「いえ……次が怪談物なので……ポルターガイスト的なものが……」

「早く書いてください」

「はい、カキます……」

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十返舎イック 華早漏曇 @taube

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