人がいないと甘い砂糖はどうなるか?

はえー、面白かった。

本作は、かつて人間が構築した娯楽都市を、ある生命体が人間の身体を借りて訪れるところから物語が始まる。娯楽都市には砂糖でできた人形や、様々な役割を与えられた人造人間がいる。

一般に、お砂糖やお菓子にはファンシーでポジティブなイメージがある。ケーキとか美味しいし可愛い。享楽的な都市に砂糖人形が配置される理由は明確だ。しかし都市から人間が去った作品世界では、これらは暗転する。本作では、砂糖の甘い匂いや、時が経過した砂糖人形の形態などがネガティブなイメージとして何度も描かれる。お砂糖やお菓子が持つ享楽的なイメージをひっくり返して見せたところに、本作の魅力がある。

また出自が異なる登場人物が配置されていて、それぞれの想いや哲学から発言し行動する。これが魅力の第二で、彼らの彼らなりの活動が、次第にこの都市の秘密を顕わにしていく。そしてそれぞれが「人間」への想いを抱いている。人間あるいは人間らしさとは? SFらしい真っ向勝負のテーマが突き付けられる。

登場人物は基本的に砂糖都市を舞台に活劇を繰り広げる。だがその合間に、静かなシーンが差し込まれる。動静のメリハリ。今まで対立していた存在どうしなのに、静かに会話するシーンがある。個人的にはここがグッときた。

ひたすら甘ったるく表現されるお砂糖。クライマックスに到るまでそのイメージが存分に発揮される。そして最終話では……。ぜひ「味読」いただきたい。