はえー、面白かった。
本作は、かつて人間が構築した娯楽都市を、ある生命体が人間の身体を借りて訪れるところから物語が始まる。娯楽都市には砂糖でできた人形や、様々な役割を与えられた人造人間がいる。
一般に、お砂糖やお菓子にはファンシーでポジティブなイメージがある。ケーキとか美味しいし可愛い。享楽的な都市に砂糖人形が配置される理由は明確だ。しかし都市から人間が去った作品世界では、これらは暗転する。本作では、砂糖の甘い匂いや、時が経過した砂糖人形の形態などがネガティブなイメージとして何度も描かれる。お砂糖やお菓子が持つ享楽的なイメージをひっくり返して見せたところに、本作の魅力がある。
また出自が異なる登場人物が配置されていて、それぞれの想いや哲学から発言し行動する。これが魅力の第二で、彼らの彼らなりの活動が、次第にこの都市の秘密を顕わにしていく。そしてそれぞれが「人間」への想いを抱いている。人間あるいは人間らしさとは? SFらしい真っ向勝負のテーマが突き付けられる。
登場人物は基本的に砂糖都市を舞台に活劇を繰り広げる。だがその合間に、静かなシーンが差し込まれる。動静のメリハリ。今まで対立していた存在どうしなのに、静かに会話するシーンがある。個人的にはここがグッときた。
ひたすら甘ったるく表現されるお砂糖。クライマックスに到るまでそのイメージが存分に発揮される。そして最終話では……。ぜひ「味読」いただきたい。
※第一章の1まで読みました。
<ミラージュ>は、地球人コーダ・オルビットの姿を借り、美しい星、地球を目指す。しかし、そこに広がっていたのは地球ではなく、新しい世界<ニューワールド>だった。
あらすじの独特な世界観が気に入って読み始めました。
<ミラージュ>の姿や登場人物たちの鬼気迫るやり取りなど、あらゆるものが色鮮やかに描かれています。
はたして、地球人たちはどうなってしまったのか?
コーダは地球人に会うことができるのか?
人造人間や菓子人形、糖蜜花、<エヴァジオン>、そしてコーダ。
これらの要素がどのように物語で絡んでいくのかとても楽しみです!