ナードの最後のフロンティア

「頼む! 俺を〇してくれえぇ!」
 そしていきり立つグリーンドラゴンの吶喊。

 そんな激烈な冒頭から始まる小説です。

 開幕一番こんなセリフが出て来るなんて、よっぽど濃いドラマがあったか作者がヤバいかの二択ですが、おそらく両方です。

 どうやら本作は異世界転生。
 次に来るのはお決まりの転生シーンだろうと気が緩むのですが、まったく容赦がありません。

 念仏を唱えながらいたす、ど根性ヒューマン、ドラゴンカーセックス……。

 一度読んだら頭から離れない名文の数々が序盤から襲来します。
 そして呆然とする転生女神(と読者)をよそに、五トントラックに転生した主人公は健気にドラゴンへと挑んでいくのです。
 そのカチカチになった陰茎を自らに突き立ててもらうため。

 しかし冷静に考えてみてください。
 ドラゴンカーセックス。
 ケモでホモでメカです。
 うまくいくはずがないのです。
 好事家ならばドラゴンが白いセダンにグラインドするおぞましいGIF動画を拝見したことがあるかと思いますが、あんな状況起こるはずがありません。

 ですが。

「あれなら俺の重量でもなんなくファックしてもらえる」

 ど根性ヒューマンへと転生した主人公は決してへこたれません。
 そこに社会に流され不幸な死を迎えた人間時代の面影は皆無。
 ひたすらに力強く、物語とレイプ目の読者を牽引していきます。

 ……ここら辺で正気に返り、これ何文字くらいの小説なんだろうと紹介ページを見たのですが、なんと約14000文字です。
 まだ10000文字あります。
 私は自らの頬を張り、マジキチスマイルを浮かべながら中編へのリンクをクリックしました。



 最初から最後まで終始笑いっぱなしの中編作品です。
 えげつない程の下ネタ、ちょくちょくブッ込まれる小ネタ、読者を笑かすことのみを目的とした洗練された文章。
 異世界で繰り広げられるアブノーマルプレイは、これらの確かな技量に彩られ、終始読者を笑顔にさせます。
 次から次へと新たな事件(というか異世界ポルノ)が展開され、気が付くと14000文字を読み終えているでしょう。

 恐ろしいのはそのオチ。
 これだけギャグに全振りしておきながら、どこか爽やかな読後感を残すのです。
 正直、アイデアだけの一発勝負かと思っていたのですが、全くもってそんなことはありません。
 下ネタが濃すぎて他者におススメしづらい事を除けば、最高のコメディです!



 『ペンタゴンが流したカバーストーリー』という文がこれ程愉快に見えたのは生まれて初めてです。
 おそらく、もうMETAL GEAR SOLIDを素面でプレイできないでしょう。
 どうしてくれる。

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