「道しるべ」 ~嘘つきの遺産~

ニセ梶原康弘@アニメ化企画進行中!(脳内

「道しるべ」 ~嘘つきの遺産~

カクヨムの読者のみなさん、こんにちは。

普段なら「チィーーーッス!」とか「ギャーース!」とか挨拶したいんですが(←やめろッ、失礼だろが)今回ちょっとだけ真面目に書きたいことがあるのです。

あ、待て、そこのお前ッ「何だよ、萌えとかハーレムとかツンデレとかねーのかよ。つまんねー」って「元に戻る」をクリックするのをやめろッ!


ちょっとだけ、オレ様の話につきあえ、いいな、わかったな、お願いしますこの通りです、どうかどうか少しだけ付き合って下さい。ね?ね?いいでしょ?(涙目で袖を掴みながら)




2年ほど前のことです。

オレ様はSNSで「チームせいほー」という物書きのコミュニティにスカウトされました。

そこは「見込みのありそうな奴」をスカウトする珍しい形式のコミュニティで、プロ作家志向の物書きたちが集まる文字通りの「梁山泊」でした。

月に1回くらいの割合でテーマが出され、それに対して各自が小説を書きます。そして、コメントやスカイプでの批評会で「ブッタ斬り」という名称の批評をするのです。

作品を書かずにノンキにラリホーしていると「プロ志向なし!」と合議で追放される、恐ろしい仕組みでした。

創始者は「鳴神るぅ」という自称プロ作家でしたが、情に厚い熱血漢の面と言葉の鞭で人を容赦なく叩く非情な面を併せ持った、不思議な人物でした。

ともあれ、この非常に強引、かつ精力的、かつ短気な彼に指導されながら、この「チームせいほー」は有志によって運営され、一時はホームページまで作られて会社化の動きまでありました。

メンバーの中には鬱でモチベーションを維持出来ず去った人、そこまでプロへの執着もなく辞めた人、彼の強烈な個性と強引な牽引力に反発して去った人など色々いました。

しかし、仕事などに紛れておざなりになりそうな執筆を「書かなければ」と追い立てることで作品を書かせ、互いに磨かせるというシステムは、プロ作家へ近づける努力を生ませるのには素晴らしいものでした。

物書きは孤独な作業といいます。

しかしこのチームせいほーでは、書いた作品をたくさんの人が批評してくれるのです。それも「面白かったですー」というお義理みたいな感想なんかじゃなく、物書きの厳しい眼で。

この「ブッタ斬られる」(批評される)という修練は非常に恐ろしいもので、オレ様は毎回オロオロしていたものです。


オレ様がおそるおそる書いて提出した最初の作品なんぞ、しょっぱなから「字数ちゃんと数えてますか?」と言われたり「これは小説ではないね」と酷評されたり。

すっかり怖じ気づいてしまったオレ様は

「うわあああ、やっぱり引き篭もって読んでるだけが……あ、でもそれだともっと睨まれるんだアウアウ。じゃあ何か無難なの書いて……ってそんな器用な真似出来るんだったらとっくにプロ作家になってらぁ!」

と、オロオロしたり逆ギレしたり自分で何やってんだか状態(笑)。

面白い話を考えればいいだけの話なのに「ど、どうすれば叩かれずにすむやろ……」と、オレ様は姑息なことばっかり考えていたのでした。


しかし、そんな独り相撲はさておき、出された作品に対して「ここが悪い」「ここはどうしてこうなるの?」と腑分けのようにバッサリやられることで、自己勉強だけのアマチュアには気づかないことが「気づき」となり、それを血肉にする(直す)ことで物書きとしてのスキルがグンと上がるのです。


こうして引き出された創作力と個性、そして己の努力で素晴らしい傑作を生み出し、このチームせいほーから、なんとプロ作家が2人も誕生したのでした。


北生見理一「海辺の街の人々」(ファミ通文庫「クロライドに没む」収録)

なぎのき「‐anotherdaze‐もう一つのカゲロウ」(KCG文庫「カゲロウデイズ ノベルアンソロジーⅡ 」収録)


オレ様自身も「カゲロウプロジェクト小説コンテスト」に挑戦した際には、審査に鼻も引っ掛けられませんでしたが(泣)、たくさんの支持や感動してくれた人の声に、生まれて初めて「物書きの神が降臨する」体験をし、拙作「A Better Tomorrow ~素晴らしき明日を」で三万字に及ぶ執筆をやり切って自信をつけることが出来たのでした。

その自信があってこそ、オレ様は、このカクヨムにも今、投稿出来ているのです。




……しかし、この素晴らしい梁山泊は、ある日突然崩壊してしまったのでした。


あまりにも謎の多い主催者の正体を探ろうとした人の存在を、とある女性が密告し紛糾した挙句、「鳴神るぅ」なる人はアカントを削除して去ってしまったのです。

そして、密告者の女性も責任を取ると言いながらこちらも結局はアカウントを削除して逃げてしまいました。

そして、「鳴神るぅ」という人の正体は、実はプロ作家でも何でもない、ニートのワナビだったことも明かされました。

うすうす彼の正体を知っていた人もいたようですが……


残されたメンバーは最後にオフ会を開いて楽しくもほろ苦い酒を酌み交わし、「チームせいほー」は解散と相成ったのでした。

しかし、残された縁は一部では切れることなく今なお交流や批評の機会が続いているのです。


今回、このカクヨムにも「チームせいほー」の残党ともいうべき人々が参加しています。

残党、といっても敗残兵の集まりどころか、皆そこらへんのワナビとは格が違うセミプロクラスの実力者。

もっとも、中には「カクヨムのコンテストに他の投稿者がいなかったら消去法で自分が受賞出来るぜ!これだぁぁッ!」と、邪な野望を抱いて、カクヨムの運営に「どうかオレ様を贔屓にするルールを作って下さい」と懇願メールを出してスルーされたり、それにもめげずツイッターから「みんな、カクヨムに投稿しないでくれ。投稿した奴は辞退してくれ。そして消去法でオレ様を受賞させてプロ作家にさせてくれ!」と土下座懇願したのに誰も辞退してくれなかったと逆ギレしたトホホな奴もいますが……(←お前のことだろ!)。

いやぁ、よくカクヨムの運営にアカウント消されなかったなコイツ(←だからお前のことだろ!)

きっと、あまりのバカバカしい企みにカクヨムの運営もうてあわなかったんだろな。アハハ……ハ…ううッ、シクシク



そ、そんなこんなのトホホな自爆節はさておき(笑)。

今回「カクヨムWeb小説コンテスト」にあたって、チームせいほーの、この強烈な主催者をモチーフとした作品を偶然、オレ様と、もうおひとりの方が投稿しています。

「彼」の描き方はまったく対照的ですが、それぞれの作品の裏にこんなノンフィクションを基にしたフィクションがあったのだ……と思って読んでいただけたら幸いです。


ほろ苦い思い出ではあるけれど、「プロ作家を騙った男」が遺してくれたものは、皆さんに読んでいただける作品となって確かにここに在るのですから……


山村四月「摩天楼に彼女は眠る」

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154970250


ニセ梶原康弘「デブオタと追慕という名の歌姫 」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880235537

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