バーと防衛省、異色のカクテルが紡ぎ出す人間模様の超絶リアリティ!!

屋上で思い詰めていたところを若いバーテンダーに見咎められた女性。
彼女が店内で語り始めたのは、とある職場で思い人と過ごした日々の物語。
バーと防衛省、異色の組み合わせから生まれたカクテルは、ありありと現実を削り出す緻密な設定と筆致に支えられて、芳醇ながらも物悲しい味わいを醸しています。

ありふれた日常業務も、極秘の特務も、今このとき世界のどこかで繰り広げられていても全くおかしくないほどの信じがたいリアリティで描き出され、命を吹き込まれたキャラたちがそれぞれの生い立ち、主張、行動原理を以て自分の意志で動き回るこの作品は、まるで現実の投射のような趣です。

これだけのリアリティを与えると、キャラが思惑通りに動いてくれずストーリー作りに苦労するのではないかと思ってしまいますが、編み上げられた物語は芸術的なほどに高い完成度を誇っています。

読み手の現実と、物語の中の現実・・・
若いバーテンダーは2つの世界の狭間で唯一幻想性を持ち合わせており、カクテル言葉にちなんだ巧みな語り口で読者を異次元へと引き込む役割を果たしているように思います。

上質なロックアイスのように洗練されたこの物語は、作者様の凄まじい力量が伺える珠玉の作品です!

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