雪国の地方都市を描きつつ、レトロゲームを愛を込めて語る

舞台は雪国秋穂県の、県庁所在地からひと駅の馬島駅(ただしこの駅、夜には無人)、その駅前にある中古ゲーム兼古本のショップ。リアルタイムでファミコンから遊んできた脱サラUターン店長と、シューティングゲーム好きなバイトの女子大生、この二人にご近所さんが絡み、懐かしのゲームを遊びながら時間がゆるやかに過ぎていく。大きな事件は特に起きないが、雰囲気が良くてすらすらと楽しめる作品だ。
取り上げられるゲームは『バルーンファイト』や『スーパーマリオブラザーズ2』などいかにも古いものから、『ソルディバイド』『ナイツ(より細かく言えば、冬季限定版のクリスマスナイツ)』等のPS・サターン時代の作品、あるいは漫画も込みで『エリア88』などまで様々。すべてに共通するのは、どのゲームも作者が実際に楽しんだのだろうなと思わせる具体的な描き方。その感情が読者にまで伝わり、プレイ経験がなくとも面白そうだなと感じさせてくれる。
冬は雪が多くて湿気が酷いこととか、電車利用が増えるため二両編成がすし詰めになるとか、さらりと描かれる雪国の生活風景も興味深い。

※「サービス業はつらいよ」まで読んでのレビューです。

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