トランプゲームの大富豪(大貧民)から派生した、素数を出し合う素数大富豪(またの名を「QK」=トランプ二枚組で作れる最大素数「1213」)。そんなゲームがごくごくマイナーながらある程度は普及している世界において、高校に入学した主人公のみぞれはQK部に入部した。
序盤はみぞれたちの心情がしっかりと描かれていく。特別な取り柄のない少女が出会ったマイナーゲーム。戦うこと・勝つことの楽しさをはっきりと知り、仲間を増やし、鍛錬を重ね。あるいは同じ新入部員の慧の、数学が好きなのにそれを親に評価されずにいた鬱屈なども。高校生としては実力トップクラスと思しき部長や、みぞれの中学時代からの友人・津々実も絡み、萌葱高校QK部に充分感情移入したところで、物語は他校との練習試合や全国大会へつながる地区予選に進む。
そして小説は、ここから面白さがぐんと加速していく。ライバルとして現れる様々な少女たち、その戦法や性格造形がくっきりと浮き上がり、一対一の対決の場で躍動する。そろばんで鍛えた暗算能力で挑んでくるいたずら好きな双子、相手の心理と手札を読んで潰しにかかる強豪、特殊な素数暗記に力点を置くチーム、昨年の大会でのリベンジをしようとするチーム、マイナー競技の悲しさで部員が少なく一人で大会に来る女の子……全国大会へ進むのは、団体一チームに個人戦上位五人。誰が勝ち上がり、全国大会ではどんな強敵が現れるのか、非常にワクワクさせられる。
※46話まで読んだ時点でのレビューです。