誰しもすべての色を持ち合わせて生きているわけではない。思い出の中に、現在の自分の中に、欠けたものを持ち合わせているのだろう。そしてそれは大抵、自分自身では気付くことのできない寂しい欠落なのだ。このお話はきっと、それぞれの色にまつわるエピソードを通して読み手である私達の『欠色』を教えてくれることだろう。その期待が、そして文面から浮かび上がる「欠けている」はずのその色彩が強烈に心を惹き付ける。新しい色を、どうか見せてください。
ずどんと響く、「痛み」の赤。すっぽりと抜け落ちた、「空白」の青。読んだ文字が、脳ではなく心に届く。欠けているからこそ、切実な言葉たち。
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