天命と想いが描く、壮大であたたかな幻想画

 人間はそうと知らずとも天命や精霊、神が実在し、人間の醜さが弱者を虐げているという、決して奇抜でも華やかでもない設定や世界観、展開の物語です。ですがそれは、そんなものは不要だから。読み進めるほどに、シンプルでありながら重厚、幻想的でありながら生者の息遣いが感じられる世界の中に引き込まれていきます。
 ある意味ではありきたりな世界の在りようはすぐ馴染んでしまうのに、与えられた天命のもと、愛や居場所を求めてさまよう人間や精霊たちの想いと生きざまが、こんなに飾り気のない文章と展開であっても存在感を放つのは、ただ見事の一言。ハイファンタジーとはかくあるべし、ですね。

 幻想的な世界での人間と精霊たちの壮大な群像劇を読みたいなら、この作品を読むべきです。

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