コレはつい先程の出来事である。
僕は帰宅途中タバコを買う為にコンビニに立ち寄った。男性の店員さんとお爺さんが何やら揉めている。僕はレジに並びながら聞き耳を立てた。
「ですからタクシーに乗るなどしてですね。そちらでお金をおろすなりご家族の人に支払ってもらうなどする他ないと思います。現状こちらとしましてもどうする事もできないんですね? 私一人の判断で——」
——なるほど。
僕はタバコの会計を済ませてちょっとしゃしゃってみた。店員さんが対応してるからスルーしても良いんだけど、なんか気になったのだ。
僕は店員さんに声をかける。
「すいません。アレですか? 家に帰りたいけどお金がない感じみたいな?」
「え? ああハイ。そうですね」
続いてお爺さんにも声をかけた。
「住所教えてもらえます?」
店員さん的にはお店のお金を勝手に貸す事はできないし、自分のお金をあげる事もできないだろう。お客さんにいちいちそんな事してたらアルバイトの意味ないし、金もらう為に騙る奴らも出そうだからだ。
ならばお爺さん一人分くらい僕が出してやろう。まさかこの時間に市外から来てるなんて事もないだろうから。
「じゅう、しょ? 〇〇町の……。〇〇町、の……」
ん?
「保険証とかあります?」
「……ほ、けん、しょう?」
なんだ? 財布にお金入ってなかったショックでパニックにでもなってるのだろうか。
「お客様、ちょっと良いですか?」
「ん? あ、はい」
「実はこのかた認知症っぽくて、もう警察呼ぶか出て行って貰うしかない感じでして。つまり、その……」
あーなるほど。
僕が浅い考えでしゃしゃったせいで、余計にややこしくなりそうなのか。良かれと思った事でもお節介、大きなお世話というわけだ。反省しよう。
「ごめんなさい。マジですいませんでした」
「いえいえ。せっかく親切にして貰ったのに申し訳ないです」
「いや、ホントすいません。でも追い出しちゃうのもアレだから警察呼ぶしかないですね」
「はい、そうですよねぇ……」
「じゃ、僕もう行きますね。ホントごめんなさい」
僕はコンビニを後にした。
さて、この出来事は、老後に一人で出歩く事のリスクを明示した事案です。
「老害は一人で出歩くな!」と多くのネット民の方々が言いそうな事でもあるのでしょうが、それは無理なお話で、「出たくないから家から出ない」と「出たいのに外に出れない」ではストレスの感じかたも違うでしょうし、ご家族の負担も想像に難くないでしょう。そもそも「家族はいるのか」という疑問も残ります。
更に「何処からが老害で、それを本人が自覚できるのか」という問題もあります。
老人に限らず、どんな人でも「自分が歳をとったと感じられるシチュエーション」に恵まれなければ「自分はもう若くはない」と気づかないでしょう。こないだバドミントンでアキレス腱を切った知り合いもいます。
年齢だけで「家にこもってろ」とは言えないのではないでしょうか?
さてさてさて? あなたなら、どう考える?