玄関のノッカーを叩く音が聞こえて参りました。
わたくしは午後のティタイム用にと、キッチンにてお茶の用意をしておりましたの。
「はーい、少々お待ちになってぇ」とわたくしはいそいそと玄関へ小走りに。
こんな時は狭いお家が羨ましゅうございます。
あらっ、このシチュエーション、どこかで同じ記憶が……
デジャブ?
わたくしが玄関ドアを開けますと、そこにはスーツ姿の殿方がお立ちでした。しかも背中には唐草模様の大きな風呂敷包みを背負っておいでです。
「まあ、ナナカマドさまではございませんの。お久しぶりでございます」
「こんにちは、高尾さま」
そのおかたは、月に一度、越中富山からお越しになるお薬屋さまでございました。
ナナカマドさまは、よいしょと背の荷物を降ろされるとスーツの前をバッと開かれ「ナナカマドですっ」といつものご挨拶。
ええ、よくテレビでお見かけする芸人の、トレなんとかさまのご挨拶と同じなんですのよ。
でもこのやりかたは、実は越中富山のお薬屋さまが、昔から採用されておられたらしゅうございます。
しかも、ナナカマドさまはお若こうございますのに、やや頭部がお寂しゅうございますの。
このあたりもパクられた、などと以前お話しされておりました。
ということは、あのトレなんとかさまは人為的に頭髪処理をされておいでに?
「さあそれでは、お薬箱のチェックをいたしましょうか」
「承知いたしました」
ナナカマドさまは玄関の三和土の上に腰を下ろされ、風呂敷包みをほどかれます。
わたくしはリビングからお薬箱を取って参りました。
手慣れたもので、ナナカマドさまはお薬箱の中味をチェックされながら、時おりわたくしに目線を合わせてお話しされます。
「ようやく秋の気配になって参りましたですなあ」
「もうお国のほうは朝晩はかなり冷え込むのでは、ございませんの?」
「さようですなあ。まあ、これくらいの気候が私ら行商人にはちょうど良い具合ですわ。
うん? 解熱鎮痛剤がいつもより早く減っておりますが」
「え、ええ。このところ色々とございまして、滅多に経験のない頭痛が……」
「それはいけませんなあ。やはり、例のアレで大変なのでは?」
そうなのです。ナナカマドさまは、わたくしが日夜跳梁跋扈いたします妖魔と戦っておりますのをご存じなのです。
ナナカマドさまはお薬の行商をされながら、全国を歩かれて妖魔退治のご指南をされておいでなのです。
「秋には秋のアレが発生いたしますからな。充分ご注意ください、高尾さま。
それと、これを今回は入れておきましょう。
ひとつは “ゾンビ・パウダー” です。万が一アレが大量に発生した時にはこのパウダーを大地にふりかけなさいな。そうすれば太古よりこの地で眠る屍どもが復活して、高尾さまをバックアップいたします」
「し、屍、でございますか?」
「さよう。先日も岐阜県のある地方でこれを使って、見事に妖魔を撃退できたと、お喜びのお葉書を頂戴いたしましたんですな」
「そんなに強力な助っ人であれば、楽ですわねえ」
ナナカマドさまは、やや上目づかいにわたくしを見られ、チチッと指先をふられます。
「確かに妖魔は掃討できるのですけども、問題がひとつ」
「――」
「甦った屍はそのまま新しい獲物を求めて、勝手に彷徨い始めるのですわ」
「はっ?」
「放っておくと、元々ゾンビですから、今度は人間さまを襲い始めるのですな」
「えーっと、それでは妖魔を退治したあと、今度はその復活させた屍を退治せねば、と言うこと?」
ナナカマドさまは大きく首肯されました。
「その通りですわ、高尾さま」
「い、いえ、それならむしろ、わざわざ屍を甦らせなくとも、最初から妖魔を相手にしていたほうが」
「ふふっ、そこですな。それでこのふたつめのお薬の登場となります。
これは甦った屍を土にもどす “アンインストール・パウダー” と申しまして――」
ナナカマドさまのお話は、そこからさらに小一時間ほど続きました。
途中でわたくし、うつらうつらと居眠りをこいてしまっておりましたの。
「――では、高尾さま。また来月お邪魔いたします」
「は、はいっ」
わたくしはビックリして目を覚ましましたの。
ナナカマドさまは結局、その正体不明なお薬を置いていかれました。
わたくしはそのまま玄関先にお嫁さま座りをしながら、カクヨムさまをチェックいたします。
拙作「猟奇なガール」にレビューをいただいておりますわ!
銀鏡 怜尚 さま、
この度はお時間をさいてくださり、レビューまで頂戴できまして誠にありがとうございます!
ツッコミどころ、ございましたでしょうか。うふふ。
わたくしは、一人称形式で物語を描いたことがございませんでしたの。
初の試みでございました。
お気に召していただけましたでしょうか♡
心より御礼申し上げます!
拙作「予想外な涼ノ宮兄弟」に、レビューとお★さまを頂戴しております!
さとうのら さま、
どうも初めまして!
この度はきらめくお★さまをくださいまして、誠にありがとうございます!
お★さまは明日への活力源。
嬉しい♡
心より御礼申し上げます!
一矢射的 さま、
この度はご多忙の中、わざわざご覧くださり、レビューまでいただきまして、誠にありがとうございます!
わたくし、お酒は少々たしなむ程度でございます。すぐにほんのりと頬が桜色に染まってしまいますの♡
お話を描きます時は、もちろんシラフでございます。
確かにわたくしの作品は、読み手のおかたを限定してしまいますわねえ。まあ、それも個性、でございます。
心より御礼申し上げます!