深夜の高級住宅街。
シャーッ、シャーッと音を立てながら、スペーススクーターで走る怪しい影がひとつ。
シルクハットに黒いマントをはためかせ、黒いアイマスクで顔をおおっている。
口ひげは真っ白であることから、老人と見受けられた。
老人はブツブツとつぶやきながら、右足をスクーターに乗せ左足でアスファルトを蹴る。
「ったく困ったもんじゃ。
近ごろではセキュリティとか申して、少し銭を持っておる連中はほとんど屋敷の警備を外部委託しておる。
これではお宝を頂戴するのための予告状は、ぜ~ンブ郵便受けに入れねばならぬ。
昔はよかったのう。
天井から忍び込んで、応接間のテーブルにこっそりと予告状を置いて、素知らぬ顔で家人か官憲に変装してのう。
『おおっ! あの怪人二十面相がいつのまにやら予告状を!』な~んて驚いくれちゃったりしてな。
わしは、クスクスと笑いを堪えるのに大変じゃったぁ。
今では郵便受けに投げ入れたとて、大抵は他の広告物と一緒に捨てられておる。
せちがらい世の中じゃのう」
老人、怪人二十面相はスクーターを急停止した。
「むむっ!
前方からスクーター二台がやってくるわい。
もしやこのわしが予告状を出すのを嗅ぎつけた、官憲か」
怪人二十面相はニヤリと笑んだ。
「わしは暇な時間に、この辺りで適当な場所を見つけては秘密の道具を隠しておる。
やっこさんたち、目の前で煙のように消え去る怪人二十面相さまの、華麗なる魔術師ぶりにに驚くぞい」
スクーターに乗ったふたりの警官は、深夜のパトロール中であった。
「おい、ちょっとストップ!」
「どうした? 不審者か」
「いや、あそこの外灯の下を見ろよ」
警官ふたりは五十メートルほど先の、外灯へ目を向ける。
「郵便ポスト、かな?」
「ああ、郵便ポストだ」
ふたりはゆっくりとスクーターを走らせ、外灯に浮かぶ郵便ポストの前で停まった。
「え~っと、これって」
「昔、ばあちゃんの田舎では見たことあるけどな」
「いやいや、いまどきこんなデカイ筒型の郵便ポストなんて、ないよ」
ふたりの目の前には、郵便差出箱1号(丸型)と呼ばれる鉄製ポストが立っている。
現在では郵便差出箱13号の名称で、差入口が大口タイプに替わり、エクスパックなどの大型の郵便物も楽に投函できるようになっているのだ。
しかもそのポストは蛇腹式であり、ところどころ空いた穴の上からつぎ当てがしてあった。
こうして怪人二十面相の巧みなカムフラージュはあっさりと見破られ、警察署に深夜徘徊老人として保護されたのであった。
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暑さ寒さも彼岸まで……な~んてことはまったくなくなりましたわねえ。
でも、ほんのちょっぴり陽射しの強さが変わってきたような。
みなさま、いかがお過ごしでございましょうかしら。
などと素通りされるのもかまわず、時候のご挨拶を。
今年も残り四か月ですって。
早いわねえ。
今年は長編で、恋愛物、現代ドラマ物と書いてしまいました。
ここからはガラリと趣向を変えまして、SF(でよいのかしら)もしくはアクション・ファンタジーなどを書いてみようかな、なんて思ったりしてみたり。
あ、まだ構想もなにもございませぬのよ。
ありがたいことに、また拙作にレビュー&お★さまをいただいております!
「本陣メーエキ商店街、焼き鳥まいど!」
侘助ヒマリ さま、
『人情味と美味しさにあふれる、昭和テイストな商店街ストーリー』
心より御礼申し上げます!
@v4lmetさま、
お★さまをありがとうございます!
aoiaoi さま、
『まるで居心地のいい焼き鳥屋さんに立ち寄るような。ほっと心癒される物語。』
心より御礼申し上げます!
月野璃子さま、
『皆様お誘い合わせの上、焼き鳥まいどにどうぞ‼︎』
心より御礼申し上げます!
「影法師がひとつになるとき」
@sue123さま、
お★さまをありがとうございます!
そして高尾つばきの物語をお目通しくだすった皆さま、感謝申し上げます!
読書の秋、でございます。
わたくしも皆さまの物語を拝読いたすのを楽しみにいたしておりま~す♬