【タイトル】
鮭さんのショートショート
タイトルからすでに笑ってしまいました。
とりあえず、感想っぽくまとまってしまったので、これで。
とりあえず:
ランダムで読んでる。
「人間はコップか」が一番おもしろいです。次点で「鍵盤豆腐」。
この話だけ、地に足がついているというか、起承転結が無難にまとまっている気がしました。
逆にキョンシーの話とか、書いてる途中でまとまりつかずに飽きたなコレ(笑)と笑いました。でも、どうにかして「終わらせる」と書き上げるのは、潔いと思います。
「新幹線、太宰治」も好き。
異世界転生を太宰で、新幹線でやるか。
物語全体を通じて、遊園地のテーマパークみたいで面白い。
上がって落ちる。繰り返す。ジェットコースターですっ飛ばす。コーヒーカップでぐるぐる回る。メリーゴーランドで現実と非現実を彷徨う。疲れたら、地に足をつけて、みんなが絶叫してるのを聞いてぼんやりする。みたいな感じ。
作者さんの長所は、if(もしも)をテーマに書くのが上手いこと。
もしも、鍵盤が豆腐になったら。
演奏者はピアノを食うかもしれない。
もしも、太宰治が新幹線になったら。
人間失格だから、乗り物になれば前向きになるかもしれない。
もしも、教師が生徒から「人間はコップでは?」と問われたら。
理屈屋の教師は「人間はコップなのか?」と考えるかもしれない。
共感できるテーマを、「笑い」にもってくるのが上手い。
遊園地はどんな形でも「お客さんが、現実を忘れて安全に笑えたらOK」なので、そういう意味で作品として成り立っていると思います。
だけど遊園地の場合、極端な話、お客さんが園内にいる時に満足してもらえればOKで、その前後のことなんて知らない。一歩外にでればもう関知しないよ。というのが前提のスタイルだけど、小説はそうじゃない。
たとえば、わたしが好きな「人間はコップか」の話は、人間の60%は水分で出来ている。と言った教師に対して、では人間は水分を貯めるコップではないのでしょうか。とおかしな質問をした女子高生の生徒が、関係性を変化させ、そこから【どうなるのか】と、その後の二人の関係性が変わるのを伝える。ドラマとして魅せるのが、小説の「お客さんを楽しませる本質」にあたると思います。
コップの話は、教師が結局、解答を見出せず、辞表をだして学校を辞めてしまう。もしもこれを「短編小説」として魅せるのであれば、教師は生徒に対して「一緒に考えてくれ。あるいは答えをくれ」と踏み込まねばならなかったはず。
そのためにも教師と生徒のプロフィールを、もう少し掘り下げて、進展するのに必要なものを整理し、読者に納得させるべく、説得力をもった話を提示しなければいけなかったのでは、と思います。
要するに、作者さんの短所としては「ドラマ」が無い。
短編ではあるけれど、継続性が無い。未来を予感させない。
そこを、意識的に変えてみる。ドキドキする、ワクワクするものを、瞬間的なものでなく、もう少し長期的なものとして計画し、物語を構築していく。そうすれば「小説の短編」が産まれるのではないか。おもしろいものができあがるのではないか。
とりあえず、今日読んだ限りでは、そんな印象を抱きました。