タイトル:
キュウドウさん
評価:
ストーリー:B
キャラクター:A
設定・舞台:B
構成・バランス:B
オリジナリティ:B+
総評
今回の自主企画のマイベストです。理由は「あっ」って、読んでいる最中に声をあげたから。他にも読んでて吹きだしたのはありましたけど、純粋に物語の内容に驚いて、声をあげたのはこちらの作品のみになります。
短編なので、一応、再読して感想を書いてます。
初読した時にも思いましたが、冒頭では「キュウドウさん」自身に対しての魅力は感じられませんでした。物語の内容も、まぁ戦時中ならそうだろうね。といった乾いた感想しかもてない印象でした。
そして物語が終わるまで「キュウドウさん」というキャラクターに関しての評価は、あまり変わっていません。仮にキュウドウさんが主人公であり、彼の生涯を描いただけの物語であれば、わたしの評価は大きく異なっていたはずです。
物語に惹き込まれた要因は、語り部である、主人公の『祖母』の存在でした。
気の触れた男、しかし最低限の仕事はして稼ぎを献上し、(おそらくは)暴力などを一切振るわず、せっせと頭のおかしい絵を描き続けるだけの男。
彼を見守り、ちょっとだけ結婚を考えるけど、亡き祖父のことを思いだし、そうはしなかった。当時の『強い女性像』が短編の中に濃縮されており、物語として描かれなかった裏側には、どんなドラマがあったんだろうと連想される要因になっています。
そんな祖母の為に、頭をおかしくさせていた弾丸が抜け落ち、これからは恩返しをするぞと張り切るものの、上手くいかず、むしろますます様子がおかしくなって死ぬ。というのに妙な説得力があります。
話としては、冒頭から終始ギリギリの綱渡りをしており、私も「ここで読むのやめようかな」と思ったのも本音ですが、前述したイケメン祖母が現れて、さらにキュウドウさんが死に、そしてもう一人の存在が現れたところで、ぐっと惹き込まれました。惹き込まれた瞬間、話が終わって、逆に印象深くなりました。
気がつけば、本当にギリギリで渡り切った。という感じです。
あと再読して思ったのですが、物語自体のジャンルは、なんというか、確かにホラーなんですが、べつに「怖い」という印象はまったくありませんでした。むしろ、祖母が格好良く、物語の最期に登場する『彼女』は実に魅力的というか、もっとこの女性の話を読みたくなりました。
っていうか、作者さん。
次は社会人ラブコメとか、書いてみる気ありません?
主にダメ男と、仕事のできる女性と、変な女性の三角関係とか(略)
なんかそういうの、書けるような方の気がします。(無責任)