タイトル:
破者の刻印
評価:
ストーリー:C
キャラクター:C
設定・舞台:B
構成・バランス:C
オリジナリティ:C
総評:
厳しめの評価になります。今後も作者さんが自分の書きたいものを優先し、それが創作を続ける原動力になっているのであれば、以下は的外れの内容となります。あらかじめご了承ください。
良かった点:
冒頭の一節です。雪が降ってきて、主人公が空を見上げるシーンは印象に残りました。ですが以後の内容に興味がもてず、第一章までをざっくり読んで、閉じてしまいました。
悪かった点:
文章は綺麗だけど読めない。続きが気にならない。どうしてだろう。と考えてみたところ、キャラクターに色がない、個性や持ち味が無いからだという結論に至りました。
現代のマンガやライトノベルのファンタジーなら、主人公には何か一つ、特殊能力や異能があったりします。そしてこれらの設定には何らかのエピソードがあるのが普通です。
古典の「むかしばなし」でも同じです。桃太郎は桃から産まれたから(明確な理由はなくとも)普通の人間とは違う。鬼退治をできる程のパワーを持つ。
アーサー王ならば、封じられた剣を抜くことで、王の資格を得る。
指輪物語では、冥王の封じられた指輪を使えばすごい力が出せるが、同時に正気を失っていく。などなど。
むしろ純粋な古典寄りのファンタジーほど、主要キャラクターが唯一無二の力を持っていたりします。ですが本作には、そういった分かりやすいエピソードがありません。エピソードが無いということは、キャラクターの存在理由が希薄になります。
主人公はどういう運命を背負っていて、何に対して立ち向かっていくのか。もっとも肝心な主人公の動機、言い換えると【今日の主人公は何をして、明日は何が起きるのか】という、物語の導線そのものが、読者に伝わらなくなります。
また、戦記物ファンタジーのお約束ですが、主人公が若い王様であれば、年寄りの賢者が出てきたり、情報分析に優れた斥候がいたり、チャラい義賊が仲間になったり、艶のあるおねーさんが近づいてきたり、老若男女様々な人間が現れて、物語をどんどんひっかき回します。
時代の濁流が、さもそこにある、あったのだと錯覚させるような展開に読者を落とし込んでくれる。それがファンタジーの醍醐味だと思います。
主人公が王様なら、登場人物は必然的に多くなるはずです。
だから、いろんなキャラクターが見たかった。時代や歴史そのものよりも、架空の歴史の中に生き、身分や格差のあるキャラクターが混ざりあって、まったく異なる人たちが顔を合わせ、様々な意見を交わす中で、この「主人公」は、こういう風に生き抜いたんだよーっていう、そういう物語が読みたいのでした。
もちろん、それも後半で書いているのでしょうけど、今回は時間も限られているので、私はそこまで辿り着けませんでした。ごめんなさい。
感想は以上になります。
今回は自主企画にご参加いただき、ありがとうございました。
秋雨あきら
2017/10/25