タイトル:
レベル一から上がらないんですけど、私は本当に勇者なの?
評価:
ストーリー:C+
キャラクター:C+
設定・舞台:B
構成・バランス:B
オリジナリティ:B
総評:
30話まで読んだ感想になります。
最初に、パッとタイトルを見た時と、イメージされた内容のギャップがさほどありませんでした。
よく言えば「ライトファンタジー」で、逆を言えば「ゲーム的なテンプレ」です。
これといって、やりたい事のない20歳の女子……
成人女性が、なし崩し的に勇者を選び、町の外にでて、モンスターを倒す。
ギルドらしき場所で報酬としてゴールドをもらう。でも何故か経験値が入らない。レベルも上がらない。
この時点で、読む人を選ぶなと思いました。
良かった点。
経験値が入らないのは、呪われた武具を装備してるから。
呪われた武具は、両親が格安で買ってきた。
それに気づいた主人公は、お古を捨てて、町の武器屋で新しい装備を買う。
しかし新しい装備にも問題があった。問題がないのは高い。お金がいる。
どうにかせねば。まずはレベルが上がらない呪いをどうにかしよう。
ーーといった形で、お話が短い区切りで、きちんと連鎖的に繋がり、進行していく点が見事です。RPGで攻略に詰まった時は、とりあえず店で一番強いのを買う。というのは定番ですし、めんどうな稼ぎを、どうすれば効率が良く片付くか。そういった事を考えるのも、ゲームが好きな人には共感される内容だと思いました。
悪かった点:
キャラクターの存在感が、やや希薄でした。
両親からもらった呪いの武具を、床に叩きつける主人公や、
粗悪品を安値で売る武器屋の存在自体はおもしろいのですが
なんというか、本当に「NPC」の域をでていません。
テレビゲームの「NPC」は、プレイヤーを導くために配置された存在です。
けれど、小説の登場人物というのは、基本的に「NPC」は登場しません。
というよりは、しない方が好ましいのだと思います。
小説は、漫画や映画、ゲームのように「絵」がありません。
基本的に、読者のイメージに、すべてを委ねることになります。
なのでキャラクターを登場させる場合、できるだけ、キャラクター間の関係性は深く描いた方が良いです。読者のイメージは基本的にキャラクターに沿って進みます。たとえば「仲の良い友達二人が会話する」といった要素を入れると、ストーリーにも、より没頭しやすくなります。
ありふれた町にいる男は、どうして武器屋を営んでいるのか。
20歳で勇者になる女性は、それまでどういう風に生きていたのか。
神殿の神官は、本当に神様を信じているのか。
そもそも、この世界に神はいるのか。
仮に、これらの男女が同じ町に20年住んでいれば知り合いであったり、幼馴染であったり、同じ学校の先輩後輩だったかもしれません。
小説の弱いところは「絵」がない点ですが
逆に、もっとも想像力を膨らませられる媒体でもあります。
しかしキャラクターの関係性が希薄であると
この想像力を膨らませる。という段階にたどり着けません。
ですので、もう一匙ぶん、キャラクターに味付けしてみてください。
20歳で勇者を始めた女性を、頑張ってるなーと応援したくなったり、ただの武器屋を、カッコイイなーと思えるだけで、ゲーム的な世界観の物語が、一気にリアリティを増してくるはずです。
感想は以上になります。
今回は自主企画にご参加いただき、ありがとうございました。
秋雨あきら
2017/10/18