タイトル:
雨もしたたる良い河童
評価:
ストーリー:C
キャラクター:C
設定・舞台:C
構成・バランス:C
オリジナリティ:B
総評:
まずこれだけは伝えたい。と思ったことが1点あります。それは、話を書く順番を間違えているという事です。
この話の本筋は、女子が自称河童を名乗るイケメンに声をかけられ、嫌がりつつも一緒にいる。という内容ですが、肝心の女子の過去情報が、三人称視点で「こういう事がありました」としか語られません。結果として、読者がキャラクターに共感するのが難しい構成になってしまっています。
特に過去の出来事は、モノローグでもいいので、きちんと描いた方が良いです。そうでなければ、現在の主人公の行動に説得力が生まれません。主人公が、イケメンの告白を振ったとしても、後から説明を加えても、読者としては「一般論としてはそうだね」と、納得せざるを得ない形になってしまいます。
大事なのは、出来事を時系列にして並べるのではなくて、当事者である登場人物たちが、その時に得た感情や気持ちを、一つのエピソードとしてまとめることだと思います。
そして、そうしたエピソードがあるから、同じような体験をした読者は共感をもち、該当するキャラクターに対しても、いろいろな感情を抱くようになると思うのです。
良かった点:
本作の評価点は総じて低くなっていますが、仮に「文章力」という項目をつけるなら「A」をつけます。
読んでいて、あまりにも文章がこなれているというか、普通にプロいなこの人と思ったのです。ただ、途中で(失礼ながら)「やっぱり違うな」と判断しました。
悪かった点:
プロでないと断定した理由は、1つのエピソードの長さでした。
私が言うのはおこがましいのですが、プロの文章というのは、基本的に無駄がありません。無駄がない理由は単純で『字数制限』があるからです。さらに『〆切』も存在するので、各話の独立したエピソードも、時間制限のある中で、おもしろおかしく作らねばなりません。
特に日本では海外と比べ、マンガやアニメといった分野がしのぎを削っているわけで、時間制限のある「1話毎のエピソード」には、それはもう、ぎゅわああああぁーっと面白さが凝縮されているわけです。
長編小説も同じです。本作の第一章が21話で構成されているなら、21話それぞれを開いた時に、少なからず「おもしろい」と思わせる内容であるのが理想になります。そして仮に、これを12話に圧縮して再構成しなさいと言われたら、12話に圧縮して「おもしろさ」を伝えないといけなくなります。
大事なのは、1話毎にエピソードを意識して書くこと。さらにそのエピソードは、全体として見た時に、1つの共通するテーマとして成り立っており、同時に独立した「1話」としてのおもしろさも存在することです。
感想は以上になります。
今回は当企画にご参加いただきまして、ありがとうございます。
また次に開く時がありましたら、よろしくお願いいたします。
秋雨あきら。
2017/10/17