タイトル:
新聞部の幽霊部員[零]
評価:
ストーリー:C
キャラクター:B
設定・舞台:C+
構成・バランス:B+
オリジナリティ:C
総評:
ぜんぶ読みました。言葉選びがおもしろかったです。ジャンケンで負けたから無職、新しい日常ってなんぞや。いつもじゃ考えられない量の英世が消えていった。などなど。普段からきっと、友達とそういう言葉を使って笑ってるんだろうなーと、作者さんの人柄が窺えて楽しかったです。内容や、物語の方向性に迷いつつも、最後まで楽しく書けたんだろうなと感じます。次の作品も読んでみたいです。
良かった点:
物語の構成そのものが、しっかりまとまっています。
本作でいちばん評価したい点です。
この話の大まかな流れとしては、
1.中学生の主人公が、新聞部の幽霊に憑りつかれる。
2.幽霊の正体が明かされる。
3.〝幽霊の心残り〟を、主人公が解決する。
4.その後も幽霊と共に過ごしていくことになる。つづく。
となっています。本編がさほど長くないのもありますが、風呂敷を広げすぎず、適切な大きさでまとまっていました。逆に不足していると感じられる部分はありますが、それは書き続けることで自然と身に着く技術だと思います。
構成の話に戻りますが、話の軸が幽霊の内容からそれず、幽霊の正体が実は従妹で、昔は一緒に遊んでいた。主人公の絵のスキルが高いのは、その時から二人でずっと絵を描いていたから。などなど。話の主題が主人公の能力、および舞台背景と上手く絡んでいて、キャラクターの存在理由に説得力があります。
悪かった点:
初めて書いたから。というのはありますが、オリジナル要素、この作品のみに見られるおもしろさ、というのは見当たりませんでした。
〝心残りのある幽霊〟といえば、物語として肝になるのは〝泣き要素〟です。主人公の身体を乗っ取った幽霊が、心残りを果たすため、修学旅行に向かい、そこで想いをはたし、今度こそ消える。
消えてしまう瞬間に「消えないで、いかないで」と思う物語を描くのが、単純に【読者が求める展開】です。
言ってしまえば、この話は、どうやって読者を泣かせるか。幽霊となった中学生の女の子に感情移入をさせられるかが求められる。というのが私の判断でした。しかし肝心の修学旅行のシーンはカットされていて、筋肉痛が痛い。大勢の英世が消えた。という二文だけでまとめられてしまいました。
幽霊の少女も現世におり「残った理由はどうして?」という疑問が浮かびます。物語で一番おいしいはずの部分が、完全に手付かずで放置されているわけです。結果として、話はまとまっているが、ストーリーがイマイチ。オリジナル要素も見受けられないという評価になりました。
とりあえず、魅力あるキャラクターを構築する技法に関しては、図書館で借りられる脚本術の本を読むのが確実です。おたがい頑張りましょう。
あと繰り返しになりますが、本作の表現には、良い意味で何度も笑ってしまいました。ジャンケンで負けたから無職。何度見ても笑います。こういうセンスは私も磨いて、見習いたいです。
感想は以上になります。
今回は自主企画に参加していただき、ありがとうございました。
秋雨あきら
2017/10/16